そば(蕎麦)
蕎(きょう)という字は、ハヤヒトグサという薬草のことです。薬草の本には、タカトウダイ、一名ハヤヒトグサとかタイゲキと書かれています。また、ソバの葉とヒルガオの葉の形がよく似ているところから、ソバはヒルガオという植物の古名に由来するという説や、「あふひ」(葵)からきているという説もあります。ソバの葉が「あふひ」の葉に似ているからでしょう。
植物学的には、ソバはタデ科に属する一年生草本で、原産地は中央アジアです。ヒルガオはヒルガオ科で、違ったものですが、昔の人は、その葉の形から単純にヒルガオを蕎と書いて、ヒルガオの葉に似た葉をもった麦のような実をつける植物ということで、簡単に蕎麦をソバと読むことにしたのかも知れません。
ソバはソバムギの略です。ソバの実には角がありますのでソバ(稜・角)ムギと呼んだのです。ソバは古名をクロムギといい、稜麦(そばむぎ)といっていた時代もありました。稜(りょう)は「かど」とか「すみ」といった意味があります。箱の内の稜のように角切角(かどきりかど)の形に、ソバの実が三稜になっているからです。
「そばを味わうのでたいせつなことは、すこしずつつるっつるっやるんでなしに、一度にたくさん頬張って、ぐうっとそばが喉をこすってはいるように食べるんだね。そのときの感触にそばの味の美味しさがあるんだね。」【平野雅章・魯山人美味の真髄】
「そばが、酒の友として好ましいのは、ダシ汁の付け加減で、自分で味を濃くも淡くもできるところにある。もちろん、そばの香り、そばの味も酒によく合う。だから、酒のサカナとしては、もり、ざるが適している。【山本嘉次郎・洋食考】同感です。
ソバは日本、カナダ、ロシア、ポーランドで栽培されていますが、ソバスープはロシアやポーランドのような東ヨーロッパ諸国でよく出されます。ソバ切りのようにルチンが逃げないので、栄養価の高い料理になっています。最近は、日本のレストランやホテルでもソバスープを出しているところがありますが、なかなか好評のようです。大量につくっておき、客の求めに応じて火を入れると、美味しく食べられる一品です。
日高 一
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」260号(2007年8月6日発行)に掲載された記事です。
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