らっきょう(辣韮)
「以前、写真家の安藤博氏の『野菜の花』にのっている福井県の砂丘地にあるラッキョウの栽培地のカラー写真を見せてもらいましたが、遥かな山を背に一面に咲いているラッキョウの淡紫色の花は幻想的な美しさを感じさせてくれました」(岩尾裕之・小林正夫共著『野菜は薬だ』農文協刊)。らっきょうは中国が原産地といわれていますが、野生の場所はいまだにわかりません。一説には中国の浙江省の山野といわれますが、ヒマラヤの山麓という人もいます。
らっきょうはユリ科の多年草で地中に白い根(鱗茎)がありますが、普通、その部分を食用にして、らっきょうといっています。「大和本草」には「糟(さけかす)と醋(す)につけて食す。今の俗、醋醤油(すじょうゆ)を合わせて、葅(つけもの)とし能く染(しみ)て食す」また「筑前(いまの福岡県の北西部)にては夏月、根を採り、久しくして皮を去り、酒醋醤油の濃煎汁に漬し、固く封すること両月、これをらんきようと云ふ。薩州(いまの鹿児島県の西部)にては根を醋砂糖にて煮、その汁に漬し、一年を経て酒芼(さけのさかな)とす」とあります。
花らっきょうは、一般に小指ほどの小粒のものを塩漬けにして引揚げるとすぐ甘酢につけますが、本来の風味は大粒のものを塩にし、土用の好天の日に一日陽光に当て、これを酢六、醤油四の割合で一度煮立ててさまします。そして砂糖を加えた漬汁につけ込み、トウガラシを丸のまま少々加え、一月ほどたつと出来あがります。ベッコウ色になるほど美味。
らっきょうの栄養については、特筆すべきものはないといわれていますが、しかし、昔から日本では、中国と同じように食欲増進、発汗、消炎、殺菌、かぜ、口内炎、扁桃腺炎、水虫、軽いやけど、田虫、切傷などに効用があるとされ、汎用されてきました。日本人の体質にはやさしい食べ物で、ニンニクなどと違って食べすぎの心配は全くありません。
辣韮(らっきょう)も置きある納屋の這入口
虚子
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」178号(2000年10月5日発行)に掲載された記事です。
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