せり
せりは春の七草のひとつ。「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これや七草」。1年の邪気を払う意味と、餅や酒で疲れた胃腸をいやすための一石二鳥の七草粥は、中国から入ってきた行事で、日本では平安時代からあったようです。野生のものと栽培されたものとがありますが、野生のものの方が香りが高く、カルシウムやビタミンCも多く含まれています。
せりの食効は、あの独特の香りを放つ製油成分にあります。カンフエン、ピネン、ミリスチンなどのテルペン類の働きで発汗作用、神経を鎮める作用、からだを温める作用、利尿作用などがあります。テルペン類というのは、草むらや森林のにおいの主成分です。風味を堪能して、その上森林浴効果が期待できるというのは何とも贅沢なことですが、近年、その効果がより期待できる根元の赤い、香りの強いせりが手に入りにくくなったのは残念です。
せりには、ビタミンA、B2、C、カルシウム、リン、鉄分などのビタミンやミネラルが比較的多く含まれています。鉄欠乏性貧血に効果を表わしますが、同時に高血圧にも効き、血中コレステロールなどの余計なものを排泄し、副作用なしに血圧を下げることができます。食物繊維も豊富なことから、便秘にも効果的な野菜です。
古くから伝わる民間療法に「煮て食べるか、煎じた汁を飲めばリウマチ、神経痛、高血圧、解熱に効果あり」といわれていますが、入浴剤としても利用されてきました。花が咲くころに摘んで陰干し、粗くきざんで布袋に入れ湯を沸かしますが、冷えからくる病気や更年期障害に有効とされてきたのもうなずけます。
せりの歴史は古く「万葉集」にはこんな歌もあります。「丈夫(ますらお)と思へるものを刀佩(たちは)きて、かにはの田井に芹を摘みけり」と、宮中の武官が腰に太刀をつけたまませり摘みをした様子が詠まれています。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」181号(2001年1月5日発行)に掲載された記事です。
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