納 豆(二)
前号で、納豆の成分の中の、血栓を溶かす作用のあるナットウキナーゼという酵素についてお話しましたが、もうすこし説明しますと、もともと血液には凝固する働きと溶かす働きが共存しているのですが、そのバランスが崩れて、固まる働きが強くなると、フィブリンという物質が血栓(血管の中で血液が固まっているもの)をつくるのです。
血栓ができると、血管がコレステロールによって狭くなっている場合には、血管を詰まらせてしまい、心筋梗塞、脳梗塞などの虚血性疾患を引き起こす危険があります。
このような血管がつまる閉塞症の治療では、通常、血液を溶かす働きを助けるためにウロキナーゼという酵素薬剤が使われて、間接的にフィブリンを分解して溶かします。ナットウキナーゼは、このウロキナーゼと同じ作用があるうえ、フィブリンに直接作用して分解する働きをもっています。そして、さらに、その効果は約八時間持続することが判っていますので、夕食時に納豆を食べれば、血栓ができやすい朝方の脳梗塞や脳梗塞の危険を減らすことができます。
また、ナットウキナーゼには、制がん作用や朝鮮ニンジンに匹敵するほどの強壮作用がありますので、老化防止の強い味方にもなりそうです。ただ、納豆の中にはビタミンKもありますので「納豆を食べると血を固めてしまうのではないか」と心配する人がいますが、まったく心配はいりません。
血栓はビタミンKがつくるのではなく、原因は血液が本来もっている溶解能力(血液が固まらないようにする力)が低下するために起こる現象だからです。しかし、何らかの理由で、医師からビタミンKの働きを抑える薬、例えば「ワーファリン」(血栓予防・治療剤として使われているもの)などを処方されている人は、その効果を損なわないために、納豆を食べても問題ないかどうか、主治医に確認してみてください。
納豆は「粒」も「挽きわり」も栄養価はほとんどかわりませんので、好みや用途で選ぶとよいでしょう。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」184号(2001年4月5日発行)に掲載された記事です。
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