統合医療とは何だろうか? 第34回
- 統合医療
さらに驚くべきことには、免疫系は脳に情報を伝えているのです。
例えば風邪をひいたり、インフルエンザになると全身倦怠感や食欲低下がおこります。
風邪やインフルエンザは単にのどの痛みや咳、鼻水などの局所症状だけではなく、
全身的な衰弱感を引き起こすのです。この理由は免疫細胞が活発化することで、
免疫細胞が分泌する情報伝達物質(これらをサイトカインと呼びます)が脳に作用するからです。
例えばサイトカインの一つであるインターロイキン1は摂食抑制作用や発熱作用に加えて、
副腎皮質刺激ホルモンや成長ホルモンの分泌を促進しますし、
インターフェロンαは徐波睡眠誘発や大脳皮質神経活動の修飾作用などが明らかとなっています。
このように免疫系は脳と対話することで、生物の生命維持調節をおこなっているのです。
以上みてきたように、神経系、内分泌系、免疫系はお互いの間にネットワークを作り、
常時生体のホメオスタシスを維持しています。
そして、このネットワークは単に臓器間の関係性だけではなく、
心の働きあるいは情動が密接に関与していることはいままで述べたとおりです。
つまり、体と心はこれら3つの系を介して切っても切れない関係にあることがお分かり頂けることと思います。
この体と心の関係を神経系、内分泌系、免疫系の関連性から
生体防御機構を中心として解明する学問が最近興ってきましたが、
この学問は精神神経免疫学とか精神免疫学と呼ばれています。
私はこの連載で折に触れて、真の健康は体と心を切り離しては得られないと述べてきましたが、
統合医療あるいはホリスティック医学とはまさにこの精神免疫学を実践することにほかならないのです。
さて、この連載もそろそろ終章を迎えようとしています。
次回からは、現代日本において死亡率が最も高い疾患、
すなわちがんに対する統合医療によるアプローチのお話をさせていただき、連載を終わりたいと思います。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」348号(2014年12月5日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |