統合医療とは何だろうか?第9回
- 統合医療
副交感神経の刺激がストレスをやわらげてくれることを前回お話しました。しかしながら、過度に副交感神経が高まりすぎるとこれはこれで困ったことが起こってきます。副交感神経が過剰に高まると何が起こるかというと、リンパ球が正常よりも増えてきます。リンパ球は免疫をつかさどる白血球ですから、リンパ球が増えるということはアレルギーを引き起こすということです。アレルギーは体内にない異物(花粉やハウスダストなど。これらを抗原といいます。)を排除する反応です。つまりリンパ球が増加することで抗原に対する反応(アレルギー)が強くなるわけです。具体的には花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などが起こります。これらは子供であれば過保護、大人であれば終日家に閉じこもって運動もせず甘いものばかり食べているような人に多い病気です。もうお分かりでしょうが、こういった人々はのんびりしすぎて副交感が優位となりアレルギー性疾患を発症してくるのです。
昔から過ぎたるは及ばざるが如し、といわれています。これはいい得て妙で、自律神経に関してもあてはまることです。自律神経の交感神経と副交感神経がバランスよく働いて、人は初めて健康に生きられるのです。どちらか一方だけに傾いていては病気が発生します。自律神経のバランスを程よく保ち、体と心が生き生きと働いている、これこそが人間の真に健康な姿であり、統合医療が目指すところもここにあるといえましょう。
さて、自律神経に関連して「白血球は自律神経の支配を受けている」ことを免疫学の泰斗、新潟大学医学部の安保 徹教授の学説によってご説明しましょう。このことは私たちの健康を考える上でとても大切なことです。安保教授のお話では、そもそも白血球が自律神経のコントロールを受けていることを発見したのは、安保教授が東北大学の学生時代に講義を受けた、東北大学講師の斉藤 章先生だそうですが、安保教授はこの学説をさまざまな実験を重ねて検証、発展させました。たとえば顆粒球とリンパ球の日内リズムを調べると、日中の交感神経優位な時間帯には顆粒球が増えて、夜間の副交感神経が優位な時間帯にはリンパ球が増えていることが明らかとなっています。一方、夏の間は副交感神経が、冬になると交感神経が優位となることが知られていますが、これらの季節の白血球の比率を調べてみるとやはり夏(副交感神経優位)にはリンパ球が多く、冬(交感神経優位)は顆粒球が増えていたのです。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」304号(2011年4月5日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |