正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

*

統合医療とは何だろうか? 第23回

     - 統合医療

食事に関してもう一つ忘れてはならないことがあります。
それは腸内細菌の働きです。
腸内細菌は文字通り、私たちの腸の中に住んでいる細菌です。
およそ500種類、100兆個の腸内細菌が住んでいます。
糞便のうち、約半分が腸内細菌またはその死骸です。
腸内細菌はヒトが摂取した栄養分の一部を利用して生活し、
他の種類の腸内細菌との間で数のバランスを保ちながら、
一種の生態系(腸内細菌叢、腸内常在微生物叢、腸内フローラなどと呼ばれる)を
形成しています。
腸の中に細菌が住んでいるというと、「まあ、汚い」などと
眉根を寄せる女性がいらっしゃるかもしれませんが、
もし腸内細菌がいないと私たちは生存することができないと思われます。
何も好き好んで真っ暗闇の腸の中に住まなくてもよさそうですが、
おそらく腸内細菌にとって私たちの腸は居心地がいいのでしょう。
人間と腸内細菌はお互いにその存在を必要としている関係なのです。

何故腸内細菌が人間にとって必要なのかお話しする前に、腸内細菌の種類を述べます。
これはまったく人間の都合でつけたネーミングですが、
腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分けられます。
善玉菌にはビフィズス菌、乳酸菌、腸球菌などがあります。
悪玉菌にはウェルシュ菌、大腸菌、ブドウ球菌などがあります。
日和見菌にはバクテロイデス、ユウバクテリウム、嫌気性連鎖球菌などがいます。
それぞれの特徴を概観すると、善玉菌は、病原菌が腸内に侵入するのを防ぐ、
悪玉菌の増殖を抑える、腸の運動を促して便秘を防ぐ、
免疫力を高めるといった特徴があります。
悪玉菌は腸内タンパク質を腐敗させ、有害物質を作りだす、
便秘、下痢、肌荒れなどを引き起こす、
腸内細菌叢を悪化させ、生活習慣病の要因となる、
老化の原因となるなどの作用があります。
日和見菌は腸内細菌としては数がもっとも多いもので、
悪玉菌の繁殖とともにその動きに同調し(ここが日和見菌といわれる所以ですが)、
その結果腸内フローラのバランスが崩れることで、日和見感染の原因となります。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」323号(2012年11月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士