正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第24回

     - 統合医療

腸内細菌を概観したので、今回は腸内細菌の働きを詳しく述べたいと思います。
ここでは世界的な腸内細菌学者であられる光岡知足先生のご著書、
「人の健康は腸内細菌で決まる!」(技術評論社刊)を参考に解説します。
善玉菌は文字どおりわれわれ人間にとって有用な働きをする腸内細菌です。
善玉菌にはビフィズス菌、乳酸桿菌、腸球菌などがありますが、
このうちヒトではビフィズス菌が強い作用を有しています。
ビフィズス菌が優位なのはヒトだけで、ほかの動物は乳酸桿菌が優位です。
善玉菌の働きは以下のとおりです。
①病原菌が腸内に進入するのを防止する
②悪玉菌の増殖を抑える
③腸の運動を促進して便秘を防ぐ
④免疫機能を刺激する。

一方、悪玉菌は人体に害を及ぼす腸内細菌です。
具体的には
①腸内のタンパク質を腐敗させ、有害物質を作り出す
②便秘、下痢、肌荒れの原因となる
③腸内フローラを悪化させることで生活習慣病の原因となる
④加齢とともに割合が増加し、老化の原因となる

タンパク質が腐敗するとアンモニア、硫化水素、アミン、
インドール、スカトール、フェノールなどの有害物質を作り出します。
これらは老化や生活習慣病を引き起こし、
場合によっては胃がんや大腸がんの原因となります。
特に肉類の多量摂取は悪玉菌を増加させますので、
以前(第15回)にも肉の害をお話しましたが、
腸内細菌の観点からも肉の食べすぎは日本人の健康を害するといえます。
次に日和見菌ですが、これらは善玉菌や悪玉菌よりその数についてはずっと多いのです。

日和見菌の特徴は以下のとおりです。
①腸内フローラの形成に寄与する
②悪玉菌の繁殖があるとその動きに同調し、悪玉菌が減るとおとなしくなる
(これが日和見菌といわれる所以です)
③腸内フローラのバランスが崩れると日和見感染の要因となる

日和見感染とは病気、ストレス、老化などで免疫力が低下したときに
通常は無害な日和見菌が病原性を発揮して
敗血症、肺炎、尿路感染症などを発症するものです。
以上の説明からおわかりのことと思いますが、
腸内細菌フローラのバランスが崩れると様々な疾病が現れます。
普段から腸内細菌フローラのバランスを保つことを意識した生活を送ることが大切です。
(具体的なフローラのバランスをとる方法に関してはあとで述べます)


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」326号(2013年2月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士