正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか?第16回

     - 統合医療

(前回からの続き)

牛乳は体によいから毎日飲む

北海道に住んでいらっしゃる皆さんの中には〝牛乳は体によい〟といって毎日お飲みの方もいらっしゃることと思います。では、牛乳を飲むと体にどのような良いことがあるのでしょうか?私はよく講演で聴衆の方々にこの質問することがあります。その答えは決まって「カルシウムをたくさん摂れるので骨が丈夫になるから」というものです。

しかし、牛乳だけ飲んでいると本当に骨が丈夫になるのでしょうか?ここでもうひとつ質問をします。欧米人はわれわれ日本人よりたくさん牛乳を飲んでいるが、欧米人と日本人でどちらに骨粗しょう症が多いでしょうか?この答えは、実は欧米人なのです。その原因は牛乳にはマグネシウムが少ないことにあります。つまり、カルシウムを骨に沈着させるにはマグネシウムが必要なのです。骨にマグネシウムが少ないとカルシウムは骨から溶け出してしまいます。ですから、骨を丈夫にしたければ小魚をたくさん食べて、同時にマグネシウムの多い海藻を一緒に食べればよいのです。Living foods for optimum healthの著者、BRクレメントも言っています、スプーン1杯の海藻がグラス1杯の牛乳に比べて1000倍ものカルシウムをもたらすことを、ほとんどの人は知らないと。

もうひとつの問題は、牛乳に含まれるタンパク質のカゼインです。カゼインは粒子が小さいので、腸の働きが低下しているときは腸壁を通過して血中に入り、最終的にアレルギーを引き起こすといわれています。更に牛乳には無機の銅が少なく、血液中のカタラーゼ活性を減少させます。カタラーゼは細胞に傷をつけ、細胞をがん化させる活性酸素を分解する酵素です。つまり、牛乳の摂りすぎは活性酸素を増やしてがんを引き起こすこともあるわけです。

皆さんの中には牛乳を飲むとおなかがごろごろして下痢をしたり、おなかが張ったりする方がいらっしゃるはずです。かくいう私もそうなのですが、これは乳糖不耐症といって、牛乳の成分である乳糖を分解する酵素、ラクターゼが授乳期を除いて日本人の体内ではその働きを失います。もともと日本人は牛乳をのむ習慣はなかったのですから、これは当然のことといえます。以上のような理由から日本人に牛乳はあまり適した飲み物とはいえないでしょう。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」314号(2012年2月6日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士