正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第31回

     - 統合医療

さて、前回お話しした免疫細胞(B細胞やT細胞のことです)は、
一体、体の中のどこに存在しているのでしょうか?
実は、これらの免疫細胞が最も貯蔵されているのは、驚くなかれ、腸なのです。
腸の粘膜上皮やその下にある粘膜固有層に免疫細胞は存在するのです。
たとえばB細胞はその70%が腸管にあります。
また、骨髄で作られたT細胞は小腸に運ばれて活性化され、異物排除やがん細胞殺傷をおこないます。
ですから、腸、特に小腸は私たちの免疫にとって欠くべからざる臓器なのです。
さらに重要なことは、この免疫細胞を活性化させるものは、
実は以前お話しした腸内細菌なのです。
たとえば乳酸菌はその細胞壁に免疫増強因子があり、
これがリンパ球を刺激して活性化させるといわれています。
従って、常に免疫力を高めておくためには、腸内細菌の生息環境をととのえてやる必要があります。
これに関しては、すでにこの連載の第24回と25回で詳しく説明しましたので、
そちらを参照なさってください。

そのほかにも腸の免疫力を高めるために必要なことがありますので、ここではそれをお伝えしましょう。
その1番目は、便秘をしないことです。便秘をすると悪玉腸内細菌が増えて、善玉菌は減少します。
これでは腸の免疫細胞は活性化されません。
便秘を防ぐためにはオリゴ糖、食物繊維の多いもの、発酵食品、
そしてねばねば食品である、納豆、おくらやめかぶなどの多糖類を含んだ食物などを多く摂るとよいでしょう。
2番目には食物をよく噛んで食べることです。
大体30回ぐらい噛むと唾液がたくさん出てきて、唾液のなかの消化酵素が食物中の活性酸素を消去してくれます。
活性酸素は腸内細菌の働きを弱めますので、よく噛んで食べることは免疫力を強化することになるのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」340号(2014年4月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
医療法人 札幌がんフォレスト
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

医療法人札幌がんフォレスト 癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士