正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

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多様性

それぞれ皆、いろんな思いがあり、ようやくこぎつけた感のある
日本でのパラリンピックの開催でしたが、
これほどまでに「多様性」を目にし、感じたことはなかったように思います。
「多様性と調和」や「共生社会の実現」など、時にきれいごとに聞こえた言葉も、
パラリンピックの放送を見て、繰り返しこれらの言葉を聞いて、
少しでも関心を持った人が増えたのであれば良いなあと思っています。

多様性とは何かと問われると、一言で答えられない、答えにくいものかもしれません。
多様性という言葉が社会で使われるようになったのは、ここ数年のことと感じます。
そして、日本で多様性というと、女性、特に主婦のキャリア支援、子育て支援、
高齢者の知識や経験の活用、そして障害を持つ人の就労支援、といった点で語られてきました。
少子化と高齢化が進む日本では、働く人材が減少していくので、
みんなで働こう、働けるものは働こう、と言われていたような気がしませんか。
では、本来多様性の意味するものは何でしょうか。
ありとあらゆる個性と個性が混ざりあいながら、他者を受容し、受け入れ、発想を高めあう。
多様性とは、こうした状況や文化、精神の在り方のことと言えましょう。
少数派も多数派も、互いを受け入れて、お互いを否定しない。
そのうえで、アイディアを出し合い、これからの未来にむけての発想にたどり着く。
だからこそ、世界を変えることができるのではないでしょうか。

パラリンピックをみていて、スポーツに必要な能力でランクを分け、
共に参加できるようにルールを変える、道具を変える、サポートする人を作り出す。
状況的にも文化的にも、たしかに多種多様さをわかりやすく感じられた機会だったと思います。
異質なものを排除するのではなく、受容する。
本質的な多様さを受け入れ、学ぶ。
自分とは異なる他者を受け入れ、より別種の思考を取り入れていく。
今後目指すべき多様性と感じました。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」429号(2021年9月6日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。