刺激の調整と行動-脳の中で処理される刺激
私たちが行動している間に、脳の中ではどのように情報が処理されているのでしょうか。
体の内から外からと取り入れられた刺激は、感覚として脳に運ばれていきます。しかし、それらすべてが受けとめられるわけではありません。全てを受けとめることは負担が多すぎて、パニックになってしまうでしょう。そこで、当面の目的の行動に必要な刺激は優先的に取り扱い、そうでないものは意識にのぼらないように押さえられます。たとえば、この文章を読んでいるあなたの目には、このブログ記事以外のものが映っているでしょうし、耳には窓から外の音やテレビの音が聞こえ、体からは衣服の触感やお尻と椅子との圧感なども入ってきているはずです。ところが、そんなことを気にせずに、文字を追うことができます。これは私たちの脳には刺激を自動的に調整できる機構が備わっているからなのです。
入ってきた刺激は、神経細胞から神経細胞へと中継されます。刺激が神経細胞を興奮させ情報となるのです。刺激調整が適切に行われているときには、それに合わせて過不足のない反応を目的に合わせて生み出すことができます。ところが、少しの刺激が加わるだけであふれでてしまう状態になると、余計な刺激を処理できずに落ちつかなくなって、とても集中して課題に取り組むことなどできなくなります。この状態では不必要な感覚刺激を抑制できないので、行動にまとまりがなくなってしまいます。ですから、余計な刺激をできるだけ押さえることが必要です。逆にたくさん刺激をしてあげないと次に情報が伝わらない状態では、刺激が足りなくてぼんやりしてしまい、課題に取り組むだけのエネルギーが供給されません。適切な覚醒状態を維持するためにたくさん入力する必要があるので、体をたくさん動かしたり、あたりを動きまわるために多動になりがちです。頭をすっきり働かせるには、感覚刺激を加えることが必要です。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」161号(1999年5月6日発行)に掲載された記事です。
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