正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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持続可能な社会のために多様性はなぜ必要なのか

「持続可能な開発目標SDGs」の言葉を最近よく聞かれると思います。2015年から2030年までに達成することを目指す国際社会の共通目標です。地球温暖化や環境問題だけではなく、人間と地球、自由と平和を追い求めるものでもあります。そのなかに、すべての人が、だれひとり取り残さない、すべての人の人権を実現、という表現があります。基本的人権を守ること、多様性を大切にすることです。

多様性とは、幅広く性質の異なる群れが存在すること、を言います。群れは似ているもので作られる点が特徴で、単純に「いろいろある」こととは違います。もともとは、様々な種の野生生物が生きる自然環境を守ろうという時に、多様性という表現が使われていたようです。

しかし、異質なものが「共存」するのは人間社会も同じです。社会作りから文化、ビジネスなどの分野でも多様性を認めよう、守ろうという動きが盛んになってきました。男とか女とか、子どもとかお年寄りとか、障害があるとかないとか、性別、年齢、国籍などや、価値観やライフスタイルなどの多様性を守ろうということです。国会議員や大臣の女性の割合を増やそうとかLGBTQの話題が注目されています。これらも「多様性」を大切にする動きのひとつです。だれひとり取り残さない、社会的に弱い立場になりがちな存在への配慮が、あちこちにあります。これだけ書かないと、これだけ言わないと、いけない社会に私たちはいるのだと思います。

それでは、なぜ多様性が必要なのでしょうか。基本的人権を守る正義の理由があります。そして、人権を守ることは、多様性によって社会が強くなることにつながります。多様性によって、人や価値観の新たな活動が生まれます。それは、新しい発想や技術の発展のきっかけになることが期待されます。私たちは日常生活の中でも、自分とは異なる境遇で生きている人を知ること、まずはそこから始めることが、理解の一歩と感じます。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」442号(2022年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。