正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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この仕事に向いているでしょうか?

学生の就職活動の相談にのると、必ず出てくる一言です。自分がこの仕事に向いているだろうか、それがわからずに、不安で不安でたまらない。けれど、どんな職業でも、職業の裏の裏まで知るなんていうことは、不可能です。ましてや、自分に向いているかどうかというのは簡単にわからないこと。

子どもの頃から知ることのできるものに親の仕事があります。自営業なら、かなりのところまでわかります。「お花が好き」とか「ケーキが好き」などというだけではやっていけない厳しさが、花屋や洋菓子店を営む仕事にあることを、理屈ではなく理解できます。

ところが、親の職業がサラリーマンだとすると、ほとんど仕事の内容はわかりません。

医療職も然り。表向きのことはわかっても、実際に何をしているのかは見えません。たいていのお父さんお母さんはご家庭では疲れている姿を見せ、仕事についての話を子どもにはしませんから、まったく判断の基準にはならずに働く大変さだけが伝わります。

そんなわけで、途方にくれる学生が多いのも当然という気がします。実習で少しだけかいま見た医療の世界に恐れ、不安を持ち、タイトルのような言葉が出てくるのでした。

とはいっても、仕事の向き不向きを測るすべがまったくないわけではありません。たとえば、働いている時間をどう感じるかというセンスです。

仕事の内容とお給料とか、休暇などの労働条件や福利厚生が良くても、仕事をしている時間が苦痛なほど長く感じるとしたら、考えものかもしれません。でも、一日の仕事の後、疲れたけれど、気持ち良い、明日も頑張ろう、という感覚さえ持てるなら、今の仕事には向いているところがあるのだと思います。仕事の後においしいお茶が飲めること。これはかなり幸せなことです。そして、仕事との仲がそう悪くはないという印かもしれません。大人が仕事をしている充実感を子どもに伝えたいものです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」243号(2006年3月6日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。