正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

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体力をつけておく意味

母のリハビリテーションが始まりました。出血したCT写真を見ると、あまり良くならないことばかりが浮かんでくるような、そんな状態でした。たぶん、私がリハスタッフならば、あまり期待を持たせないように進めるかもしれません。環境を徹底して調整することを中心に、御家族指導を考えたであろうと思います。

ところがそんな状態の母なのですが、思った以上の回復ぶりです。半身不随の麻痺そのものは軽くはありませんが、全身の状態がよい上に、バランスがよい。勘がいい。半身不随になった場合、半身が動かない状態をしっかり認識し、その感覚を学習し、動く半身で全身を支える方法を獲得していかなければなりません。母の場合、これが非常に早い、しっかりしています。筋力強化トレーニングもして、麻痺していないほうの足などは、娘の私よりもしっかりしています。間食もしなくなった分、おなかもすっきり。病気になって一ヶ月、表情も明るく、声を出して笑うことが多くなりました。

母は若い頃はバレーボールの選手、運動能力の高い人でした。最近は退職した父と一緒に、野菜作りに従事していました。体を動かすことが好きということは本当に大切なことと、改めて思いました。健康で、身体能力の高かった人が思うように体を動かせないことは、本当に辛いであろうと思います。けれど、もともとの能力の高さはその後の回復を左右します。リハビリテーションは、この能力に頼る部分も大きいです。

もうひとつ、影響を与えているのは未来を見つめる姿勢を持っていることです。母と話していると、「どうしてこうなっちゃったんだろう」という話題はほとんどありません。家をこう改修してもらったら、私はこれができる。こんなふうに過ごすという、未来を語ることが多いのです。この夢を、空想ではなく、現実可能なものにするために協力することもリハビリテーションのひとつの役割と改めて感じています。

とにかく、日々の体力強化は大切です。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」245号(2006年5月6日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。