正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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家庭生活と職業生活

脳出血で母が倒れたために、突然私は主婦になりました。それまでは、家庭・家族にほとんど貢献せず、仕事を言い訳に好きなことをしていたので、この変化には音を上げてしまいそうです。

ところで、気になったので、あらためて『主婦』を辞書で調べてみました。「家族が気持ちよく元気に仕事(勉強)ができるように生活環境を整え、食事などの世話を中心になってする婦人(主として妻に、この役が求められる)」(三省堂新明解国語辞典)とありました。

「気持ちよく元気に」というのは大変なことです。この大変な役割を、専業にすることが少なくなっている、できなくなっている現状があります。

「男は仕事、女は家庭」という伝統的な性役割観は、本音ではともかく、建て前的には成立しなくなっています。様々な生き方(ライフコース)が選択される現代社会では、かつて専業主婦だった母親の行き方はモデルにはならないのです。高齢社会では、これに介護の問題が加わります。家族だけでの介護は限界で、公的介入が必要とされるわけです。

家事を誰が担当するにしても、分担するにしても、家庭生活と職業生活をうまく両立させる工夫が求められます。私の場合は突然の出来事であり、不規則な仕事であるために、これまでと同じように職業生活を送るのは難しいものでした。仕事においても、家庭の中でも優先順位をつけなければなりませんでした。とりあえず、長期の出張や集中してやらなければならない仕事、締め切りの厳格な仕事は断りました。仕事を断るということには、不安が付きまといました。不要な人間になってしまうかもしれない、不安です。仕事があることの大切さも身にしみたのでした。あとは、周囲の協力です。幸いなことに私の職場はリハビリテーションの教育・研究に携わるところなので、この点はとっても助かっています。適当にストレスを発散して、続けていこうと思っています。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」247号(2006年7月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。