正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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自殺の多い世の中は

去年、日本の平均寿命は縮みました。男性の平均寿命が縮んだのです。男女差はいっそう広がりました。この寿命の違いは、自殺によるものです。交通事故死の三倍を越す自殺というのは、尋常とは言えません。寿命が変わるほどの自殺。日常茶飯事という言葉があてはまってしまいます。

本来は、働き盛りで悠々自適であるはずの六十代以降の自殺が多いのは、良い世の中・社会とはいえません。子育てを終えてから、四十年も生きる動物は人間以外いません。本来ならば、種の保存、維持する呪縛が解ける、人生の後半こそ、絶頂期であって欲しいものです。

なのに、豊かな老後を謳歌することなく、自ら死を選ぶ、選ばざるを得ない日本の社会。何かがずれてしまっているのでしょう。社会がおかしい、経済が不安定、といって誰かに責任を押しつけるだけではなく、真剣に考えなければならないときのような気がします。

大人が夢を持てないのに、子どもに夢を持てというのはおかしな話です。大人がこれからの人生に夢を持つために、子どもに向かって自分の夢を語ることが出来るために、いったい何をすることが必要なのでしょうか。

長寿の方とお話ししていると、いくつか気がつくことがあります。人生の先輩たちは、「学ぶ」ことと「働く」こと、これを大切にされています。いくつになっても「学ぶ」ことの重要さを知っていらっしゃる。そして、収入を得るために「働く」ということではなく、これからの未来を生きる人たちのために貢献する、という意味が強いようです。

そんな強くたくましく生きている大先輩たちから、学ぶことはたくさんあるようです。未来を託す人たちを育てていくことが、楽しい「働き」であり、いつまでも好奇心を持って「学ぶ」ことが出来ると、人生の謳歌につながると信じていきたいものです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」250号(2006年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。