正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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大人になる

かつて社会の枠組みは一定で、子どもは社会の決めた通過儀礼を体験することで、社会に受け入れられて大人になっていきました。ところが、現代は社会の枠組みそのものが変化し、特定の通過儀礼など何の威力も持たないものになりました。大人になるためには、事故や病気、トラブル、失恋、仕事の失敗などいろんなつまずきを経験し、それを克服することで、少しずつ大人になっていくのかもしれません。

大人になるとはどういうことなのでしょう。高校の同期生と話す機会がありました。三十年ぶりに会う人、初めてお話しする人もいましたが、ふっと昔に戻ることができました。キラキラしていた青春の同じ時と空間を過ごしたということはこういうことなのかと実感しました。そして、みな大人でした。

大人とは、その人なりの成熟と考えるとわかりやすいと思います。ある年齢を超えたから、何かができるようになったから大人の条件を満たしたわけではない。自分の生きる形が見えてきたそのときに、大人という言葉がなじんでくるものと思います。自分の生きる形を積み上げていくので、人の数だけ大人の形があるわけです。話しを聞いていて、つくづく生きる現実は違うものだと感じましたが、それぞれの世界で成熟を目指しているという点では共通の大人の感覚と受け取ることができました。

それと同時に、当たり前のことですが、いろいろあって今があるのだと思いました。二十歳になったから突然責任感が生まれるはずもない。時が来たから大人になるなんて、簡単に仕上がってしまうほど人生はつまらなくはない。無茶なことをしたり、無謀な考えを持ったり、プライドを傷つけたり、自分の限界を知ったり、どうでもいいことで悩んだりしながら、魅力的な大人になるのだと感じました。

四十半ばをすでに超え、間違いなく私たちは大人です。それでもまだこれからと、考える大人が増えていくと世の中は変わるかもしれないと思うのでした。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」283号(2009年7月6日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。