正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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中毒と依存

練炭による一酸化中毒の話題や、覚せい剤の使用についてニュースが多いこのごろ。中毒とは、まさに毒にあたる(中る)の意味です。人体にとって毒性のある物質が、その許容量を超えて人体内部に取り組まれることにより、正常な機能が阻害されることを言います。

精神に影響を与える薬の中毒から引き起こされる症状も中毒です。そのため、ひとつのことにのめりこむ、執着すること、マニアや病み付きになっている人をさして、俗に使われることもあります。お買い物中毒、恋愛中毒、活字中毒などは、それにあたります。

法律上麻薬中毒は、依存症とされています。覚せい剤などは中枢神経に対する作用により、著しい不適応行動や心理的変化をおこします。これが使用中あるいは使用直後に現れる場合は、物質中毒として扱われます。つまり、覚せい剤を止められないのは依存症、使用したことによっての不適応行動は中毒症状です。

覚せい剤を使うと、血圧が上昇、脈が速くなる、散瞳するなど交感神経刺激症状が出現します。発汗が活発になり、のどが異常に渇く。内臓の働きは不活発になり、便秘状態になります。性的気分は増幅され、不自然な筋肉の緊張、落ち着きのない動作を示すことが多いです。過剰摂取すると死亡することもあります。食欲低下、過覚醒のため不眠となり、覚せい剤をはじめるきっかけや、使用目的になるようです。

この症状は統合失調症の幻聴と同じため、覚せい剤の使用によって、幻聴症状が生じることがあります。覚せい剤の後遺症として、統合失調症と区別がつかないような幻覚妄想状態や意欲低下が現れ、精神科病院への入院が必要な場合もあるのです。

また、覚せい剤の使用を止めたにもかかわらず、使用しているときのような感覚が生じることがあり、これをフラッシュバックと読んでいます。使用を中断して数年を経て経験する場合まであります。止めたから、元の体になるというものではないのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」287号(2009年11月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。