年をとると時間は早くなる?
入院中の高齢者(高齢群)と20代の若者(若年群)を対象に、時間作成法を用いて時間判断の調査を行いました。3秒、6秒、30秒、60秒の時間間隔を、ブザーで鳴らして知らせるというものです。若年群は3秒、6秒、30秒、60秒の時間感覚全てを正確に作ることができました。しかし、高齢群は30秒と60秒の時間の間隔を作ることができませんでした。早くブザーを鳴らしてしまうのです。50代、60代、70代、80代の年代については統計的な差はありませんでした。それでも、70代と80代の加速率(実際の時間に対する主観的時間、ブザーを鳴らしてしまう時間の比率)は、これまでの報告よりもはるかに高い結果でした。
今回の調査は、健康な高齢者の方が対象ではありません。入院という体験によって、身体、心理、社会面の主観的幸福観が低下し、時間の判断に影響を与えていたのかもしれません。この研究の結果は、高齢者群の主観的な時間経過は若年者群よりも速まり、主観的時間の加速化が起こっている、ということでした。主観的時間の加速化が生じたということは、高齢者には周囲の時間や出来事がゆっくり経過しているように感じているのかもしれません。
そうすると、やらなければならないことがあるときや、楽しく過ごす1日については問題ありませんが、何もすることのない1日は長く辛いものになっているということです。ぼーっとする時間や休息も大切ですが、これが毎日では辛いです。時には拷問のようになるかもしれません。
あるお年寄りが教えてくださいました。デイサービスのバスを待つ時間が、とても楽しみなのだそう。なぜなら、おめかししてマンションのロビーに降りていくと、男子学生さんが声をかけてくれるそうです。「おはようございます。今日は赤がきいてます」。うれしくて、彼の通学時間にあわせて早めにロビーに出ています。「今日はなんて言われるかしら」と考え、待つ時間が楽しいそうです。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」299号(2010年11月5日発行)に掲載された記事です。
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