正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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三日坊主対策は脳をだますことから

今度こそはと思いながら、なかなか続かないことってありませんか。早起き、筋トレ、ジョギング、ダイエット、禁煙、整理整頓、語学学習など、あきらめた経験はないでしょうか。

 

私はよくあります。腰痛のため筋トレを続けようと始めますが、なぜかいつも3日で終わります。忘れたころに腰痛が出現し、痛みが止まったら今度こそはと本気で思います。でも続かない。これを繰り返しています。

意志が弱いからとか、目標が明確ではないとか、本当に必要なことではないためとか、続かない理由はいろいろ分析されていますが、なかなか難しい。続かない原因に、新しい習慣を作ることを脳が嫌うから、脳は慣れていることをするように働くからというものがあります。

私たちの行動は1日うち、おおよそ45%は無意識の習慣で成り立っているといわれています。特別考えなくても、いつも通りのことは、スーッとできます。朝起きて、顔を洗って、歯を磨いて、いつもの通勤路を運転するようなことです。このような、いつも通り考えなくても体が動くようなときは、脳の中心にある基底核という部分を使っています。考えなくても、いつものことができる、いつものルーティンは、省エネになっています。

これに対して、いつもと違うことをするときには、額の内側あたりの前頭前野という脳の部分が使われます。意識して考え、先を読む、考えて行動を変えるときです。この時、脳のエネルギーであるブドウ糖を大量に使います。脳以外の細胞はタンパク質や脂質を代替エネルギーとして使うことができますが、脳は基本的にはブドウ糖だけしかエネルギーに使えません。なので、脳は変化を避けたがるのです。

何か新しい習慣を身につけるには、肩の力を抜いて限りなく小さいことから、大きなことは分割して小さくしてから始めることがおすすめです。腹筋を1回するとか、家の周りを1周する、といった感じです。脳に大きな変化ではない、特別なことではないと思わせるのです。そのためには、自分でも期待しすぎず、できること、やるべきことを確実にこなしていくことです。三日坊主対策は、果敢に攻めない戦略が1番のようです。

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この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」434号(2022年2月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。