正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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運動前のストレッチ

健康のためのフィットネス。ケガや筋肉痛予防など準備のためにも、運動前のストレッチはとても大切です。ですが、ストレッチの仕方によっては、運動前に行ってもケガが少なくなるわけではないという研究結果が出ています。これまでの常識とは少々違った結果かもしれません。

ここで効果がないと言われているストレッチは、座ってリラックスする「静的ストレッチ」のことです。静的なストレッチは、運動のパフォーマンスを高めるわけではない、という結果です。

運動前の準備としては、心身ともに考えることが必要です。座ったり寝たりの状態では、身体がリラックスしてしまい、運動する準備状態にならないという指摘なのです。運動前にゆっくり筋肉を伸ばしてほぐしてしまうと、かえって神経の反応が鈍くなり、本来の運動能力が思うように発揮されず、けがにつながるとも言われています。もちろん、すべての運動に対してではなく、短距離走やジャンプなど爆発的な力が必要なタイプの運動や、最大筋力の発揮が必要な運動の場合です。

そのかわりの準備運動として「動的ストレッチ」をすると良いでしょう。たとえば、短距離走者が競技前に行う長く大きなスライドが、それにあたります。運動前のストレッチは、なるべく立った状態、あるいはいすなどに座って身体を起こした状態でする方が効果的ということです。この方法では、心理的にも運動する準備にもつながります。

運動前、ウォーミングアップには心身共にアクティブモードにするために、立って動きながら柔軟性を高めていく方法がおすすめです。

軽く反動をつけたストレッチをすると、大きく関節を使うことになり、運動に必要な可動域を広げることができます。また、ダイナミックに関節を動かすので、関節の潤滑油となる組織が十分に分泌され、日頃からの健康管理にも有効です。ウォーミングアップとして行う場合は、使う筋肉をしっかりと意識して動かすとより効果的です。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」329号(2013年5月7日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。