正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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幸せになるために

イギリスの大学の研究に、ボランティア活動をすることにより精神の健康状態が改善し、長寿につながる可能性があるという報告がありました。公衆衛生関連の公開されている40件の論文を分析した結果です。ボランティア活動をする人の死亡リスクはしない人に比べて20%低いという結果でした。つまり、ボランティア活動は人を幸せにするというものです。この研究では、ボランティアをする人は抑うつの程度が低く、生活満足度と幸福度が高かったそうです。

さて、この結果をどう解釈しましょう。ボランティア活動がメンタルヘルスの改善と関連することは間違いないと思います。人のためにという形をとりながら、人と人のつながりを感じ、時間を使い、お金を使う。自己の能力やかつての知恵を使うことができる。もしかすると、余裕がある人が多くボランティアをしているためかもしれません。ボランティア活動は自己実現の場として機能するとも言われています。人のためと思った活動は、自分のために、自分の喜びとなっている。

けれど、本当にボランティア活動が原因かどうかを証明することはなかなか難しいです。文化の違いもあります。日本の場合、古くから5人組や町内会、自治会など地縁・血縁によって結び付いた相互扶助の慣習があったため、外部からのボランティアを受け入れる仕組みや必要性は少ないものでした。地域では民生委員などの制度が以前からありました。しかし、都市化・核家族化による人口の隔たり・流動化のため、いざというときにはボランティアの存在は大きなものになっているようです。

ボランティア活動の原則としては、自発性、無償性、利他性、先駆性の4つがあります。ボランティア活動が既存の社会システム、行政システムに存在しない機能を創造的な自由な発想で補完するという役割を担うことから発生したものである。新しいことに挑戦することが、日常の当たり前のことを変えて、刺激的でポジティブな感情を生み出すこともあるようです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」334号(2013年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。