正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

*

糖尿病の恐ろしさ

糖尿病とは、インスリンの作用が十分でないために、ブドウ糖が有効に使われず、血糖値が高くなる病気です。インスリンは血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓などへ取り込み、血糖を下げるホルモンです。膵臓で作られ、血液によって全身に運ばれるものです。

そのため、糖尿病を放っておくと全身に影響が出てきます。エネルギー不足のため疲れやすくなり、糖が尿に出ますのでやせてきます。恐ろしいのは血糖値の高い状態が長く続くと、合併症の起こる可能性が高くなることです。

合併症には細い血管に現れるものと、大きな血管に現れるものがあります。細い血管にみられるものとしては、網膜の血管が傷害される視力低下や腎臓病、神経障害などがあります。大きな血管では動脈硬化により起こる合併症で、脳卒中や心筋梗塞、足の壊疽などがそうです。

さらに、糖尿病があると記憶に関わる脳の海馬という部分の萎縮が進みやすいとういう九州大学の研究が報告されています。病気になった期間が長いことや、早い時期から糖尿病になった場合、萎縮の危険性が高まるそうです。17年以上の糖尿病の患者さんや、中年期から糖尿病と診断された人のほうが、高齢になって診断された人よりも海馬の萎縮が進んでいた結果でした。

また、空腹時血糖値と萎縮との関係は見られませんでしたが、食後2時間の血糖値の高さの関連が指摘されています。ご自分の血糖値を知っておくこと、健康診断をきちんと受けておくことは大切です。

食事のバランスをよくすることは、認知症予防にもなるということです。運動を行う時間は食後1時間頃がよいといわれていますが、特に決まりがあるわけではありません。生活の中に取り入れられる、習慣となるための工夫が必要です。無理なくできる運動、リラックスできて集中力も高まるもの、激しい運動ではなくても自分のペースで行えるヨガは糖尿病対策には最適です。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」368号(2016年8月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。