正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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おひとり様と濡れ落ち葉

紅葉のきれいな季節になりました。雨に濡れた木々は鮮やかで、落ち葉も綺麗です。秋を楽しむ時ですが、冬がそこまできています。そして、今年もあと2か月、時の流れの早さを感じます。

そういえば、「濡れ落ち葉」という言葉がありました。30年ほど前に流行り、流行語大賞にもなったと思います。

「濡れ落ち葉」とは、定年退職後の夫のこと、仕事人間だった夫の変わり果てた姿、邪魔者となった夫を表現した言葉です。妻が出かけようとすると「わしもついていく」と、どこにでもついて来る。掃いてもなかなか取れない濡れた落ち葉のようで、「濡れ落ち葉」です。別名「ワシも族」とも言いました。

それまでは、居場所がなく家庭にいる夫を「粗大ゴミ」と表現していました。仕事に追われ趣味もない、家庭も顧みなかったこと、地域とのつながりもない。退職後、いざ何かを始めようと思っても、そのために必要な人間関係もない。それを探す意欲やエネルギーがない。

女性は居場所を持っています。「居場所」のない夫が「居場所」を持つ妻に頼り始めた結果が「濡れ落ち葉」となったのかもしれません。「亭主元気で留守がいい」はその逆の表現です。

言葉は時代を反映して生まれてきます。男性にとっては失礼な表現でしょうが、こんな言葉ももうなくなってしまうかもしれません。

なぜなら、結婚しない人、離婚する人が増えているためです。いわゆる、おひとり様が普通のことになっています。誰かにしがみつく必要もない。しがみつかれる心配もない。 

老後の生活で頼るものは、お金にしろ、人間関係にしろ、自分の力で作っていかなければならないそれが老後の準備です。

ただし、親の介護の問題が大きくなっています。親の老後の面倒を見ながら、自分の老後を考える。老後の資金は50歳で確認し、50代の10年間で貯めても遅くないとか。正面から捉えることが必要なようです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」371号(2016年11月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。