正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第51回

     - 統合医療

魂とつながるために、ケリーは言います。「魂とのつながりを深めるための方法には、祈り、瞑想、ランニング、ヨガなど様々なものがあります。なんにせよ、最初にすべきなのは、心を鎮めることです。思考をとめなければ、魂のエネルギーは生じてこないのです。魂のエネルギーと思考は相互排他的なのです」。

魂とつながるとどのような効果があるのか?最近の研究でその一端がわかってきました。例えば、瞑想をするとメラトニンの分泌が増えます。メラトニンが増えるとぐっすりと眠れるようになります。免疫システムがじっくり時間をかけて細胞修復や解毒作業をするのは、じつは睡眠中だけなのです。したがって瞑想によってメラトニンが増えることは、がんからの回復につながるのです。さらに、瞑想によってテロメラーゼという酵素が増えるという研究もあります。テロメラーゼは、ヒトでは生殖細胞・幹細胞などでの活性が認められ、それらの細胞が分裂を継続する時に必要な酵素です。つまり細胞の寿命を延ばす酵素です。テロメラーゼは免疫システムの細胞寿命も延ばすことがわかっていますので、がんと闘う時にも大切な酵素なのです。

もう一つ、遺伝子のスイッチのオンオフに関連する研究があります。私たちの生命活動は遺伝子のなかに含まれるアデニン、チミン、グアニン、チトシンという4つの塩基が指令して作り出すアミノ酸(これはやがてタンパク質となります)がおこなっています。つまり、遺伝子とはこの4つの塩基配列のことを指しますが、この遺伝子の発現(つまりどのようなタンパク質が作られるか)は、わたしたちの行動によってスイッチがオン(タンパク質が作られて、ある生命活動がおこなわれる)になるか、オフ(タンパク質が作られず、遺伝子の働きが抑制された状態)になるかが変わってくることがわかってきました。親から受け継いだ遺伝子は同じでも、その遺伝子の働きが生じるか否かは私たちの行動によって違ってくるのです。瞑想を続けると遺伝子の発現が健康を増進する方向に変わるという研究もあります。つまり、瞑想を続けることで、がんの遺伝子発現を抑制できるかもしれないのです。

このように、魂と深くつながるという行為は、がんという存在が私たちの体に必要のない状態にまで回復させる力を持っていると言ってもいいでしょう。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」370号(2016年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士