正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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さくらサクラ桜

お花見の季節です。かつて桜の見ごろは入学式のころでしたが、今は卒業式。少しずつ早くなっている気がします。今年は特に早かったようです。

桜の花ことばはソメイヨシノが「純潔」「優れた美人」、シダレザクラは「優美」「ごまかし」、ヤエザクラは「豊かな教養」「善良な教育」「しとやか」、そしてヤマザクラは「あなたに微笑む」「高尚」など。花ことばはどれも見た目だけではなく、内面からの美しさを示すものとなっています。

桜の色はピンクではありません。赤みを含んだ淡い紅色。それでいて、白に近いものです。色彩の心理学では、桜色は美と愛を表す色といわれています。女性的な波長をもち、やさしさや母性・寛容な気持ちを育み、心の傷や痛みを癒してくれる、このような色の効果が期待できるようです。

百人一首には、「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ(紀友則)」があります。多くの日本人の好きな歌と思います。私も桜の咲く季節には何度もこの歌を思い出します。桜の大木の下で扇をひろげ舞降る桜の花びらを受け止めていたり、縁側で頬に手を当てながら散る花を眺めていたりする姿を想像します。

まさに、この歌に歌われるような情景が、日本人が桜を好む理由と思います。冬から春に咲く花であり、視界一面を覆うように咲くこと。花言葉の通り、奇抜な色でなく繊細な色であること。華やかな咲き方をする一方で、すぐ散りゆく姿やその潔さ。ここに好感を覚えるのだといわれています。

この心理を利用した災害対策や災害文化の例として「土手の花見」という話があります。土手は冬に凍結しゆるんでしまいます。そこに雨が降る、梅雨がやってくると土手の決壊につながりかねない。そこで、その対策として「土手の花見」です。花見という誰もが自然に楽しむことができる文化を利用し、多くの人が集まることで、土手は踏み固められていくというわけです。桜の名所は川の土手が多いです。災害と折りあうということ、文化に取り入れるということの大切さを教えてくれます。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」388号(2018年4月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。