正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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夏から冬へ 寒さに脳も縮こまる

今年の夏は暑かった。と、思っていたら最近は寒い。いっぺんに冬のよう。暑さから解放され、ほっと一息の上、虫の音や月明かりに感傷的な気分になっていられない寒さです。心も身体も冬の準備はできていなかった。

お部屋の気温は適切になっていますか。実は、室温が低いと脳の老化が進むという研究があります。居間の温度は低い家で暮らす人ほど、脳の健康状態に影響を受けているという研究結果からです。

寒いと体温が下がることを防ぐために血管を収縮させます。その結果、血圧が上がり、脳の血管が変化します。そうなると、小さな梗塞ができたり、細い血管が切れたりすることで、脳の機能が低下してしまうのです。また、人は心地よい環境にいて、「食べたい」、「遊びたい」、「運動したい」といった意欲が出てきます。寒い環境にいると、そんな意欲が低下します。意欲の低下は、アルツハイマー型認知症にもつながります。

生活の基本は、食べること、着ること、住まうこと、衣食住です。住む環境がよくない場合、食べることにさえ注意が向かなくなります。ついつい、たんぱく質の摂取量が少なく、炭水化物主体で食塩が多くなりがち。その結果、身体全体の不健康となりやすいのです。

さらに、部屋が寒いと、運動機能も低下します。寒い環境の部屋では、多くの場合、暖房器具の前を離れられず、こたつから出られず、運動する機会が減ってしまいます。ときに、寒さのため一日中、布団やベッドの中で過ごすこと、ありませんか。こうなると、本当に活動量は激減です。

部屋の寒さのため、こたつや布団の中で過ごすことで、運動する機会が減ってくると、途端に脳の機能が落ちてしまいます。運動と脳の機能は関係ない気がするかもしれませんが、脳にとっては、頭を使うことも身体を使うことも同じ情報処理なのです。運動の機会が減るということは、脳の機能も低下させてしまうのです。お部屋の温度、確認しておきましょう。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」479号(2025年11月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。