老年期 こころの危機
どの年代にもこころの危機があります。大切なものを失い、ときに目標をあきらめ、葛藤や悩みを抱え、何かしらの精神的にくたびれるような体験をしながら生きています。健康、経済状態、社会的活動、人間関係、あるいはアイデンティティの確立など様々な要素が絡まり影響し、それぞれの人を安定にも不安定にもします。老年期の危機として大きなものに、認知症、老人介護の問題、それから自らの死の3つがあります。
60歳を過ぎると、約10%の人に脳の器質的な障害が現れるといわれています。高齢者の精神障害の80~90%は、いわゆる認知症の症状を持つものです。認知症には脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病による認知症、その他の原因によるものがあります。栄養障害や、感染症でも認知症の原因となるものがあります。治療可能な認知症を見逃さないことが大切なことです。認知症の症状は、物忘れだけではありません。うつ状態、攻撃性、時間や場所や人がわからなくなる障害、不安と被害妄想、言語障害、食欲の異常、生活のだらしなさなどもその症状です。このような症状は、本人にとってはもちろん、家族を含む周囲の人にも大きな苦痛をもたらします。脳の変化はさけられないことであっても、脳血管性認知症の原因となる高血圧や糖尿病などを予防・治療し、防ぐことができるものです。食事や生活習慣に気を配り、定期的な健康診断により生活習慣病を予防し、日頃の身体的健康を確保することが重要です。それはこころの健康の維持・増進につながるのです。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」179号(2000年11月6日発行)に掲載された記事です。
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