立冬の頃
- 鍼灸治療
日没が早まり日の出が遅くなり、寒さも日々増してくるこの季節はなんとなくココロが沈みます。
先日、芥川賞を受賞した又吉直樹氏の作品「火花」を読みました。その中に冬の前の憂鬱な気分について「昔は人間も動物と同様に冬を超えるのは命懸けだった。多くの生物が冬の間に死んだ。その名残で冬の入り口に対する恐怖があるのだ。」という一文があり、なるほど冬の前に憂鬱になるのは私だけではなく、ある意味DNAに組み込まれているのかしらと納得したりしています。
“命懸け”というほど大げさではないにしろ私が子供の頃、大人たちは冬季間の暖房用の石炭の搬入の手配や、保存食の役割も担っていた漬物を仕込むための大根、白菜、キャベツなど大量に買い込んで冬への準備をしていたなと懐かしく思い出します。
さて、今年の立冬は11月8日。
東洋医学では立冬から立春までの3ヶ月が冬と考えています。東洋医学の古典「黄帝内経」には冬の養生法として冬三月、此謂閉蔵。水冰地坼、無擾乎陽。早臥晩起、必待日光、使志若伏若匿、若有私意、若已有得。去寒就温、無泄皮膚、使気亟奪。此冬気之応、養蔵之道也。逆之則傷腎、春為痿厥、奉生者少。と記されています。
“冬は早寝遅起きで生命エネルギーの貯蔵庫“腎”を傷めないように過ごしましょう”というような内容です。自然界でも広葉樹は葉を落とし、動物の中には冬眠をして冬に対応しています。私たちの体も冬モードに変わってきていますので冬に適した暮らし方をして過ごされるのがよろしいかと思います。太陽の動きに合わせて朝は遅く起きて夜は早く寝ましょう。睡眠は“腎”を補います。体を暖かく包み、しょうが、かぼちゃ、ねぎ、ごぼうなど体を温める食材を上手に利用して体を温め“腎”に蓄えられたエネルギーを消耗しないように冬を過ごしていきましょうね。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」359号(2015年11月5日発行)に掲載された記事です。
著者 ●鍼灸師 |
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