センブリ
センブリは北海道の渡島半島から、九州南端の諸島、屋久島まで広く分布しています。秋、紫色の筋のある白色の星状の花をつけます。リンドウ科の一、二年草で、草丈は五~二十㎝、方形の茎で、分枝するものもあります。センブリの茎根を乾燥したものを当薬ともいいますが、正徳三年(一七一三)の『和漢三才図』には、「当薬正字ハ詳ナラズ、俗ニ云フ、世牟不利、せんぶり」とあります。
センブリは千振で、千回湯の中で振り出しても、苦味が残るというのでつけられましたが、まさに苦味薬草の代表です。五十万倍にうすめても、まだ苦味が残るといわれるほどです。成分は苦味配糖体のスウエルチアマリン二~四%、そのほかスウエロサイド、ゲンチオピクロサイドなどを含んでいます。
薬効は苦味健胃薬で、胃炎、消化不良に用いられます。また、胃痙攣など急性胃痛には、乾燥したもの六gを水二〇〇㏄で煎じ、一五〇㏄くらいになったものを熱いうちに一回に飲みます。慢性肝炎には、これを三回にわけて飲むとよいとされています。粉末二gを水で飲むと、二日酔いの予防になるといわれ、飲酒三十分前に飲む方法があります。四gを煎用すると、回虫、ギョウチュウの駆除効果があるとして、私の田舎では、以前、よく使われたものです。
センブリは体質により用量を加減するようにします。俗に虚弱体質といわれる人は、体を冷やす危険がありますので、標準量の半分以下を用いたほうがよさそうです。
センブリの採取は開花期(およそ十月中・下旬)に全草を抜き取り、水洗いをしないで、土を落としただけで、根元をそろえ、糸で編んでつるして陰干しします。茎が簡単に折れる程度にまで干して、袋に入れて保存します。最近、山野草の栽培が盛んですが、以外に難しいのがセンブリです。需要があるのに、栽培化が遅れているようです。
千振の花を摘みたる旅の霧
佐野まもる
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」226号(2004年10月5日発行)に掲載された記事です。
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