ツクシ
ツクシはスギナの胞子茎で、顕花植物の花茎に当たるものです。スギナはトクサ(木賊)に属する隠花植物の羊歯類(しだるい)です。
スギナには方言が多く、一般にはツクシン坊と呼んで親しまれています。ウマノサトウ、サトウグサ、ツギクサ、キツネノタバコ、ヘビノマクラなど、地方によって様々です。
ツクシを食用にするときは、胞子の散る成熟前の若いのをとって、ハカマ(鞘ともいう)をとってゆで、アクを抜いてから料理します。三杯酢、カラシ和え、ゴマ酢和え、佃煮、椀ダネなどにしますが、卵とじには田舎料理の野趣があるし、ツクシ飯は昔からのものです。
赤羽根の
摘み残したるつくづくし
再び往かん
老い朽ちぬまに
つくづくし
又つみに来ん赤羽根の
汽車行く路と
人に知らゆな
再起不能の身を自覚していた子規は、赤羽根の荒川堤で摘んだツクシを下げ、見舞いに寄った碧梧桐の話しから、つい自分も興をもよおして詠んだという歌です。
彼は明治三五年九月十九日未明に三五年の短い生涯を閉じますが、その半年ほど前の早春に、このように赤羽根のツクシについて、おおらかに歌い上げています。病床六尺に苦吟しながら、水彩画で草花の写生をし,死に近い時期に、自らを慰めたのであろうと思います。
トクサ属には約三〇種が知られ、国内にはスギナのほかに、ミズスギナ(ミズトクサ)、イヌスギナ、フサスギナ、トクサ、イヌドクサ、ヒメトクサなどがあります。いつの間にかハウスで促成栽培されたツクシがデパートの食品売り場に並べられ、野草が作物に出世。私たちの周囲は、まだそこまでは、と思いますが、都会の人たちは、それを買ってふるさとをしのぶご時世になってしまったようです。
スギナは湿熱・淋病に煎じて服用するとよく、ウルシかぶれに煎汁を塗ると効果があるといわれ、用いられていたようです。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」234号(2005年6月6日発行)に掲載された記事です。
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