正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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ユリ根

     - クスリになる食べ物

ユリ根の原産地は日本から中国にかけての東南アジアで、ユリ科の日本伝統野菜です。飛鳥時代から祭事に使用されていたといわれます。昔のアイヌの人達は、山野で採取したユリ根を大切に貯蔵しておき、来客の折には、ユリ根団子やユリ根ご飯を作って、もてなしたということです。

関西を中心に高級食材として扱われていて、おせち料理には欠かせない食材ですが、全国生産の98%が北海道産です。ユリ根は種作りから育て始めると収穫までに6年、じっくり育ちます。関東ではあまり食べませんが、京都ではよく使われます。京料理の煮物、蒸し物、あんかけ、あえ物の材料として欠かせない素材です。関西では料理店だけではなく、一般家庭の食卓にもよく上ります。

ユリ栽培が始まったのは、江戸時代の後期で、宮崎安貞の「農業全書」(1696)には、野菜としての栽培法が書かれています。「本草綱目」には、「新たなるは蒸して食し、肉に和してまたよし、乾きたるは粉にして餅となし食す。人に益あり」と、ユリ根の利用法について書いています。

ユリ根には食物繊維が豊富に含まれ、その量は牛蒡に近い。一般に野菜の食物繊維は不溶性のものが多いのですが、ユリ根の場合は水溶性3.3%、不溶性2.1%と水溶性の食物繊維のほうが多いという特徴があります。加熱すると特有の粘りが出ますが、これはグルコマンナンという蒟蒻と同じ水溶性の食物繊維です。

水溶性の食物繊維は粘りがあるために、物質を抱え込んで腸からの吸収を阻害する作用があります。この作用により、コレステロールの吸収による血清コレステロール値の正常化、糖質の吸収阻害による糖尿病の予防、ナトリウムの吸収抑制による血圧の正常化など、生活習慣病に対する予防効果が期待されています。腸内細菌の環境を整えて整腸作用にも役立ちます。

不溶性の食物繊維にも便秘の予防と改善、発がん物質の排出によるがんの抑制作用などの生理作用もあります。また、消化がよく、タンパク質やカリウム・マンガンなどのミネラル、B1・B2・B6・葉酸などのビタミンも豊富なので、胃腸の弱い人や乳幼児に適した食べ物です。

食わざれば
咲いてしまひぬ百合の珠  
加藤楸邨
西野次朗


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」443号(2022年11月5日発行)に掲載された記事です。

著者
福士 高光
株式会社ケルプ研究所 代表取締役会長

略歴
F・E・ヨガライフ協会会長。理学博士。F&Eシリーズ開発者。