季節を味わう
北から南へ細長い日本は、春、夏、秋、冬の四季の感覚がはっきりしていますので、その土地の人たちは気候風土が育んだものをそれぞれ生かし、各地に相応しい繊細な味覚、味わいのある豊かな食生活を編み出してきました。
野菜、果物、海藻、魚介類もそうですし、旬のものはすべて美味で、栄養にも富んでいます。「春苦み、夏は酢のもの秋辛味、冬は油と合点して食え」、これは石塚左玄(明治時代の日本の医師・薬剤師、陸軍で薬剤監・軍医を務めた。玄米、食養の元祖といわれている)の道歌ですが、この歌はその季節の穀物や野菜が、特有の味を持っているので、それぞれの季節にはその季節の食べ物を摂ることが、身体には必要だということを意味しています。
例えば春ですー。ふきのとう、わらび、よもぎ、のびる、たらの芽、せり、うど、つくし、たんぽぽの葉、みつば、みな香りが高く、苦味を持っています。苦味は、長い冬を耐えてきた私たちの体が求めているものです。不足しているビタミンB、C、D、Eを芽吹き始めたこれらの山菜・野菜が補ってくれます。
夏ですー。暑い季節は誰にもこたえます。夏ばてという言葉もあるくらいですからそんなときの野菜はその季節に合う栄養を持っています。また、高温多湿の夏は、食べ物が傷みやすい季節でもあります。酢の物つまり酢仕立ての食べ物は腐敗を防ぎ、疲れを取り、解毒の力を持っています。
秋ですー。ほんのちょっと辛い刺激を与えることで、夏の弱った体は回復します。辛味は香りを誘い、味覚を高めます。
冬ですー。冬はあっさりした薄い色の野菜を使うことが多いのですが、ゴマ・大豆・くるみ・米・その他の雑穀など、純良な植物性油脂に富んだ栄養豊かな保存のきくものができます。
私たちは「お土から上がりた物」を大切にしなさいといわれてきました。これは神様のお恵みだから、そこで採れた産物を有難く感謝して、その土地その土地の食べ方でいただきなさいということですが、食の基本姿勢を示されたものといえましょう。
青梅に手をかけて寝る
蛙(かわず)哉
小林一茶
西野次朗
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」450号(2023年6月5日発行)に掲載された記事です。
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