正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第37回

     - 統合医療

がんが発生する原因は現代医学をもってしても未解決だと前回申し上げました。
しかし、がんが発生するうえでおそらく非常に重要だと思われる要因はあります。
それはストレスや心の在り方です。
それだけでは何のことかおわかりにならないと思いますが、ここに一つの重要な研究があります。
それはイギリスの心理学者、ハンス・ヨルゲン・アイゼンク博士の研究です。
博士は2000人を対象として人の性格を以下の4つのタイプに分類しました。      

タイプ1:仕事の失敗や人間関係のストレスをコントロールできず、絶望感や無力感を深めていく
タイプ2:ストレスの対象に対して怒りを発し、攻撃的となる
タイプ3:タイプ1と2の両面を併せ持つ
タイプ4:自分の自立性や相手の自立性を重視する。他人の行動や感情がストレスの原因となることが少ない

以上のタイプ別にがんの死亡率を調査しているのですが、
博士によればがんの死亡率はタイプ1が46%であるのに対し、タイプ4はなんと1%の死亡率なのです。
両者の間には死亡率で実に46倍の開きがあるのです。これの意味するところはみなさんにもおわかりでしょう。
そう、ストレスをコントロールできない人ががんになりやすいのです。
では、ストレスがあるとどうしてがんができるのか?
これに関しては新潟大学の安保 徹教授の学説がわかりやすいと思います。
簡単に言いますと、過度のストレスや働き過ぎがあると自律神経や情動の中枢である視床下部が刺激を受けます。
その結果交感神経が興奮し、副腎からアドレナリンやコルチゾールというホルモンが過剰に分泌され、
そのため免疫力が低下します。さらに交感神経の興奮は白血球のうち顆粒球を刺激し、
顆粒球から過剰な活性酸素が発生し、細胞のDNAを傷つけます。これらの結果としてがんが発生するのです。
アイゼンク博士の研究と安保学説を、わたしはがんの治療を考える上で非常に大切なことと考えています。
それは、がんの治療には、がんを除去するといった物質的な治療法のみでは限界があり、
がんを心と体の歪み(あるいは“詰まり”ーこのことは後述します)として
とらえる必要があるということを意味しているからです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」352号(2015年4月6日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士