正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第48回

     - 統合医療

次の法則は「より前向きに生きる」です。

ケリーはこの章の最初に次のように述べています。「がんから劇的に寛解した人々は、愛やよろこび、幸福感の感受性を高めるため、今を生きるという意識を持つよう心がけていました。日々の生活を幸せで満たすことは、身体の治癒にとってとても重要なのです」。

毎日の生活に幸福感を感じるようになると、脳内の「幸せホルモン」が増えます。その結果、以下のようなことが起こります。

  1. 血圧、心拍数の減少。コルチゾールホルモン(以前お話ししたように、これは活性酸素を増やしたり、免疫力を低下させます)の分泌を下げる
  2. 血流をよくする
  3. 呼吸を深くして、細胞に酸素を行き渡らせる
  4. 食べたものの消化吸収がよくなる
  5. 白血球や赤血球の働きを強化し、免疫システムを向上させる
  6. NK細胞が活性化され、がんに対する攻撃力が高まる
  7. 感染にかかりにくくなる
  8. がん細胞の有無を精査し、がん細胞があれば取り除く

これら一連の効果はがんに対して非常に強力な自然治癒力となると考えられます。そう、幸せな人は長生きするのです。

この章に出てくる、興味深い研究を一つご紹介します。それは初期の前立腺がんの患者さんで、手術、放射線、抗がん剤治療はしないと決めた人たちを二つのグループにわけて、単なる経過観察と前向きに生きるトレーニングを含む補完代替療法を受けたグループに分けてがん発現遺伝子の状態を調べた研究です。その結果、補完代替療法を積極的に行ったグループは遺伝子の発現がオンからオフに代わっていたのです。また、腫瘍マーカーも補完代替療法に取り組んだグループは4%減少したのです。かたや、経過観察のグループは腫瘍マーカーが6%上昇していました。つまり、前向きに生きる生き方は、(ほかの補完代替療法と一緒になって)免疫システムを強化し、身体ががんと闘うことをサポートしてくれることが明らかとなったのです。

さて、より前向きに生きるための実践法とはどんなものでしょうか?ケリーは次のような事項を推奨しています。一日のはじめに笑う、感謝の念を持つ。つらくてもまず笑うのです。人は幸福だから笑うとは限りません。笑っていると幸せになるものです。なにごとにも感謝の念を持つことも大事です。五日市 剛さんは、辛いときや悲しいときは「ありがとう」と言いなさい、そしてうれしいこと、楽しいことがあったら「感謝します」と唱えなさい、そうすれば自分にツキが回ってくると言っています。これは真実だと私も思います。次のおすすめは一緒にいて楽しい人とつきあうことです。暗い人、愚痴ばかり言っている人とは距離を置くべきです。そして、活動的になることです。つまり日々の暮らしの中ですぐに実践できること、例えば自然の中を歩く、運動、ガーデニング、料理、瞑想、踊る、歌うことなどをケリーは挙げています。そして寝る前に、「今日、五分だけでも幸せな時間をすごしたか」を確認するとよいでしょう。最後にもう一度繰り返します。幸せな人は長生きするのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」367号(2016年7月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士