正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか? 第52回

     - 統合医療

さて、いよいよ最後のテーマは「どうしても生きたい理由を持つ」です。

がんを宣告されたあなたが最初に思うことはどういうことでしょうか?約500名のがん患者さんのがん相談をおこなった経験から申しますと、その時思うことは「死にたくない」ということが最も多かったのです。これは当然と言えば当然のことです。がんイコール死という図式は患者さんの間ではいまでも根強い公式です。しかしながら、死にたくないということとどうしても生きたいということは同じ考え方ではないように思われます。どういうことかと言うと、「死にたくない」ということは、ある意味、消極的な考え方だと思うのです。当たり前のことですが、しかし健康な人間が忘れている(あるいは故意に忘れようとしている)絶対的な事実は「人は必ず死ぬ」ということです。

死にたくないと思っても人は必ず死ぬのです。ですから、死にたくないと思うことは一見当たり前のようですが、無意味なことなのです。それに比べて「どうしても生きたい」という考えは、もっと積極的に生を捉えていると思います。

ケリーは言います、「身体をリードするのは心であり、その逆はあり得ません」と。これまで述べてきたように、周囲の人々に支えられ、幸福感にみたされて生きているがん患者さんは、幸せホルモンが分泌され、免疫力が向上し、がんから奇跡的な回復を遂げます。これはまさに心が身体をリードしている事例です。同様にがんを宣告されても死を思い煩うことなく、どうしても生きたいという強い意志(心)があればがん再発のリスクは減り、生存期間が延長することを示唆する研究があります。逆に、がんに捉われ、死の恐怖に恐れおののいたあげく抑うつ状態になると余命が短縮することも示されています。つまり、どうしても生きたい理由をもって生きる生活は、幸福感に満たされた生活同様に、休息・修復反応がオンになり、セロトニン、オキシトシン、ドーパミンなどの幸せホルモンの分泌が増大し、免疫力が向上するのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」372号(2016年12月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士