正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか?第5回

     - 統合医療

さて、それでは統合医療はどのように人間を捉えているのでしょうか?

統合医療は最初に述べましたように、あらゆる適切な療法の活用であるということです。ですから、この中には漢方やアーユルヴェーダなどどのような療法でも包含されますが、ここでは古代日本に伝わる体と心の考え方や東洋医学を中心にして、これらが人間と病をどのように捉えているかを見ていきましょう。

古代日本では血(チ)は霊(チ)に通ずると言われてきました。血は文字通り血液ですが、これが霊に通ずるということは即ち人体に霊魂が宿ると言うことに他なりません。そして私は血は乳(チ)にも通ずると考えています。

つまり、私達の血液は食物を摂取することで新たに産生されるのです。かって岐阜大学農学部教授の千島喜久夫博士は「血液は腸で産生される」という千島学説を発表しました。この説はいまだ広く承認されるには到っておりませんが、たとえ腸の細胞で赤血球が産生されないとしても、私達の血液が食物を摂取しなければ産生されないという意味で、千島学説は実に適切な指摘だと思います。

そしてこの事実が体と心は切り離すことはできないという考えを裏打ちしていると私には思えるのです。例えば、私達の料理教室の講師を務めてくださっている村上朋子先生はかって精神科の専門看護師でしたが、村上先生によれば統合失調症の患者さんのように他人との関係接触が断たれた場合でも食事の時だけはみなテーブルに嬉しそうに集まって来るというのです。

このことは、私達が食事をすることによって体だけでなく心が喜んでいることを示しています。逆に鍵っ子が誰もいない部屋で食べる夕食はさぞ味気ないものだと思います。また、何か心配事がある時の食事が砂を噛むようであることは誰でも経験があることでしょう。このように私達の祖先は、私達の体は心と一体であることをすでに知っておりました。これを昔から心身一如と呼んでおります。この心身一如が崩れたときに病は訪れると言えるでしょう。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」299号(2010年11月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士