統合医療とは何だろうか?第6回
- 統合医療
心身一如が崩れたときに病が訪れると前回述べました。これは心のありかたが体に影響を与え、逆に体の不調も心に投影されるということです。つまり、心と体の両者があいまって健康な生活が送れるのです。私の考える統合医療とは、つまるところさまざまな治療法を駆使して体と心を最適な状態にセッティングすることであるといえます。血圧が高いから降圧剤を飲めば高血圧が治るという考えや、胃がんがあるから手術で胃をとればがんは治るという西洋医学的治療には心へのアプローチがすっぽりと抜け落ちています。薬を飲まなくてもストレスがなくなるだけで血圧はある程度下がります。胃を摘出してもストレスの多い生活を続けていればやがてがんは再発するでしょう。
病気を治すという場合に大事なことは人間を丸ごと観るということだと私は思います。最近患者さんから言われる苦情のひとつは、総合病院の医者がコンピューターの画面ばかり見ていて患者である自分の顔色一つ見てくれないということです。これは最近の医師が人間の病気は画像と血液や尿のデータを見ていればすべてわかるという錯覚に陥っているためと思われます。この態度では西洋医学が得意とする心筋梗塞や急性胆のう炎などの急性期疾患は治せても、がん、ストレスに伴うさまざまな不定愁訴や自律神経失調症、あるいは喘息や過敏性腸炎などの慢性疾患を治癒に導くことは困難でしょう。これら慢性疾患にはその背景に心のありようという問題が横たわっているからです。特に現代で重要なのはストレスの問題です。ストレスからの解放こそ現代人が罹患する病気からの解放につながると私は見ています。ストレスとは、生物学的には何らかの刺激によって生体に生じた歪みの状態を意味しています。例えばばねを引き伸ばしたり、縮めたりすればばねの内部にゆがみが生じますね。このゆがみをストレスといい、もともとは材料工学上の用語です。この概念を生体に応用したのがカナダの生理学者、ハンス・セリエで彼はホメオスタシス(生体の恒常性を維持する機能)によって一定に保たれている生体のバランスが崩れた状態(ストレス状態)から回復する際に生じる反応をストレス反応と呼びました。(続きは次回に)
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」300号(2010年12月6日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |