正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか?第14回

     - 統合医療

さて、前回までは統合医療に関していろいろな角度からその定義づけを行ってまいりました。いわば統合医療の総論のお話でした。今回からは統合医療の各論のお話をしてまいりましょう。

各論の第一は食事に関するお話です。食事と医療とどんな関係があるのか?と首をかしげる方もいらっしゃるかもしれませんが、賢明な「未来」の読者の皆さんは多分健康における食事の重要性はすでにご存知のことと思います。
食事は健康の維持ならびに病気の治療にとっていくら強調してもし過ぎることがないくらい重要です。

皆さんは沖縄の26ショックをご存知でしょうか?沖縄県の平均寿命は、2000年には女性が86・01歳で日本一でしたが、男性は77・64歳で、5年前の4位から26位に急落しました。2005年の調査では、男性だけでなく女性も糖尿病、肝疾患などの項目で全国ワーストになりました。とくに壮年期における脳出血、急性心筋梗塞、肝疾患、糖尿病などによる死亡率の増加は深刻です。1980年代以降、沖縄では肥満の増加が顕著です。 それは脂肪からのエネルギー摂取が30%以上の人は、成人男性で30・5%、女性で36・4%と男女ともに全国平均をおよそ10%上回ったことにも伺えます。かって沖縄は長寿県として有名でしたが、現在の平均寿命の急落は、戦後アメリカの統治による欧米流の高脂肪食が原因であろうと思われます。つまり、沖縄の26ショックは日常の食事が私たちの健康にとって非常に大きな影響を与えることを如実に示していると思います。

このことを私たちが食べた食物がどのように変化していくのかという観点から考えて見ましょう。私たちが食べた食物は胃と小腸の中で消化液の作用や腸の運動により泥状粥の状態になります。この泥状粥は小腸の絨毛にくっつき、やがて絨毛組織内に同化して吸収されます。これらのうちタンパクはアミノ酸にまで分解され、門脈をへて肝臓に運ばれ、肝臓で再合成ののち体に必要な蛋白となります。糖質は最終的に単糖類にまで分解されて吸収され、これもまた門脈を流れて肝臓に運ばれます。一方、脂肪はカイロミクロンという脂肪-蛋白の小滴となり、腸絨毛のリンパ管に入り、その後血液循環と合流します。このように食物は糖、蛋白、脂肪に分解されて小腸から吸収され、最終的には私たちの体や血液となるのです。昔から、食べ物が血肉になるといわれていますが、これはまさにそのとおり、私たちの血肉は食べ物によって賄われているのです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」310号(2011年10月5日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
医療法人 札幌がんフォレスト
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

医療法人札幌がんフォレスト 癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士