統合医療とは何だろうか?第15回
- 統合医療
前回、私たちの血肉は食べたものによって賄われているというお話をしました。食べたものが文字通り血肉になるのですから、食べ物の選択は健康な生活を維持していくためにとても重要で、このことはいくら強調してもしすぎることはありません。すなわち、食べ物が悪いと私たちの体の中の血液は汚れ、細胞や臓器、筋肉なども正常な活動が営めなくなるのです。このことは前回ご紹介した沖縄の26ショックからも明らかなことです。さて、今回は分子矯正医学者、山田豊文先生の著書「細胞から元気になる食事」を参考にして、どのような食事が大事なのかを考えて見ます。まず、以下の項目に関して皆さんはイエスかノーかどちらだと思いますか?
がっちりした体を作るには肉を食べるのが一番
牛乳は体によいから毎日飲む
米よりパンのほうが栄養価は高い
バターはコレステロールが多いから植物性マーガリンを使っている
炭水化物は太るから食べない
答えを先にいってしまうと、これらはいずれもノー、誤りです。その理由を説明しましょう。
まず、「がっちりした体を作るには肉を食べるのが一番」ですが、これは“肉類=筋肉”という錯覚があるようです。肉の栄養素はほとんどがタンパク質です。タンパク質はアミノ酸という物質から構成されています。私たちが食べた動物の肉は小腸で一度アミノ酸に分解されてから吸収され、再度肝臓でタンパク質に再合成されます。動物の肉だけで必要なアミノ酸を得ようとすると一日に必要なカロリー摂取量をすぐオーバーしてしまいます。そしてタンパク質の過剰摂取は体に負担がかかるのです。なぜならタンパク質の分解、代謝には多くのエネルギーが必要であり、炭水化物に比べて代謝の効率がわるいからです。同時にタンパク質は最終的な分解産物としてアンモニアを発生します。アンモニアは非常に毒性が強く、肝臓で毒性の低い尿素に変えられ、その尿素は腎臓でろ過されます。つまり、肉をたくさん食べると、肝臓と腎臓に負担がかかるのです。そして大量の尿素は排泄されずに、関節周囲組織に蓄積され痛風を引き起こします。また大量の肉の摂取は尿酸、硫酸が多量に産生され、血液が酸性に傾きます。血液は正常では弱アルカリ性(ペーハーは7・35-7・45)ですから、血液が酸性になるとそれを中和するために骨や歯からカルシウムを溶かして血液中に放出するようになります。つまり、骨が溶け出すわけです(これを脱灰といいます)。動物の肉を食べて筋骨隆々の体を作ろうとするつもりが、実は骨がぼろぼろになって、スタミナ切れを起こしてしまうのです。
(この項、次回に続く)
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」312号(2011年12月5日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |