正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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統合医療とは何だろうか?第20回

     - 統合医療

(前回からの続き)
GI値の高い炭水化物を多く摂取する場合にもう一つ問題となることがあります。それは発がんの問題です。
GI値の高い炭水化物(糖質)ばかりを食べているとがんが発生しやすくなります。
今回はその問題を解説しましょう。
前回お話したように血糖値が上昇すると膵臓からインスリンというホルモンが血中に分泌されます。
とくに血糖値が急激に上昇するとインスリンの血中濃度も急激に増加します。
インスリンの働きは血中の血糖を筋肉、肝臓、脂肪組織などに送り込んで血糖値を低下させます。
同時にインスリンは大腸上皮細胞や肝細胞を成長させる働きがあります。
この働きが正常に作動している間はいいのですが、
血糖値が常時高値でインスリンの血中濃度も高値で推移しますと、
がん細胞の芽ががんへと成長するのを促進してしまうのです(これをプロモーションといいます)。

糖尿病は日本人でも1620万人の患者がいるといわれている疾患ですが、
このうち95%は肥満が原因でおこる2型糖尿病です。
この2型糖尿病には以前から膵臓がんの発生率が高いことは経験的に知られていました。
最近のデータでは50歳以上で糖尿病を発症した人の120人に1人膵臓がんを発病するといわれています。
2型糖尿病ではインスリンの分泌が低下したり、働きが弱くなっています。
このため膵臓から通常以上のインスリンが分泌されます。
つまり常にインスリンの血中濃度が高いわけですから、前述した理由で膵臓がんが発症するわけです。
同様に糖尿病の患者さん、特に女性の患者さんでは、
大腸がんの発生率も糖尿病でない方に比べて高いといわれています。

少しお話が横道にそれましたが、ここで強調したいことは、
炭水化物もGI値の低い炭水化物であれば決して肥満の原因になることはないということです。
GI値が高い炭水化物は肥満の原因になるだけでなく、がんを誘発する可能性もあるのです。
そして肥満やがんのプロモーターとなる原因がインスリンなのです。
ただ、誤解していただきたくないのは、
インスリンは健康な生体にとっては必須のホルモンだということです。
このホルモンが肥満やがんの原因となるからといってインスリン分泌を完全に抑制することはナンセンスです
(無論、膵臓が正常に働いている限りまったくインスリンが分泌されなくなることはありませんが)。
重要なのは生体が必要とする以上の追加分泌されたインスリンをなるたけ少なくすることです。
そのためにはGI値の低い炭水化物の摂取が必要なのです。
(この項続く)


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」320号(2012年8月6日発行)に掲載された記事です。

著者
小井戸 一光
癒しの森内科・消化器内科クリニック 院長

癒しの森内科・消化器内科クリニック

略歴
1977年、北海道大学医学部卒業。北大第3内科入局、臨床研修を受ける。

1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。

1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。

1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。

認定資格
日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会専門医、日本内視鏡学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本超音波学会専門医・指導医、医学博士