統合医療とは何だろうか? 第30回
- 統合医療
前回に引き続き、免疫システムに関してさらにご説明しましょう。
免疫には自然免疫と獲得免疫があると前回お話ししましたが、このうち獲得免疫は2種類に分けられます。
ひとつは細胞性免疫です。細胞性免疫の役目はウィルスとがんに対する攻撃、破壊です。
骨髄で作られたリンパ球が胸腺に入るとT細胞になります。
このT細胞はヘルパーT細胞とキラーT細胞に分かれます。
ヘルパーT細胞はさらにTh-1細胞とTh-2細胞にわかれます。
Th-1細胞の表面には異物やがん細胞を自分の細胞と見分ける能力があり、
自分の敵だと判断するとキラーT細胞やマクロファージを活性化します。
キラーT細胞は直接がん細胞やウィルスを攻撃し、
マクロファージはがん細胞やウィルスを攻撃するサイトカイン(インターフェロンやTNF-αなど)を放出します。
私たちの体内には毎日5000個ほどのがん細胞ができるといわれていますが、
これらはキラーT細胞やマクロファージがNK細胞などにより攻撃されて死滅してしまうため、
通常はがんが体内に発生してこないのです。
もうひとつの獲得免疫が液性免疫です。液性免疫系の主役は抗体です。
細菌が体内に入るとマクロファージが細菌を食べます。
その結果、細菌の情報がTh-2細胞に伝えられ、さらにTh-2細胞からBリンパ球に情報が伝わります。
Bリンパ球はこの情報を受けて抗体を作ります。抗体というのは分子量が約20万のタンパク質です(図)。
抗体は図のようにY字型をしていて、先端部分が病原体の種類によって異なっているため、
ちょうど鍵と鍵穴のように病原体が抗体の先端部分に結合すると、病原体が破壊されてしまいます。
ただし、液性免疫は体にとって良いことばかりではありません。
抗体には数種類あり、この中にはアレルギー反応をおこすような抗体もあります。
いずれにしても、この精妙な免疫力があってはじめて
ヒトは外敵やがん細胞から我が身を守ることができるのです。
もし免疫力がなければ、私たちは外敵の攻撃を受けてすぐに死んでしまうことでしょう。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」338号(2014年2月5日発行)に掲載された記事です。
著者 |
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略歴 1982 年より自治医科大学放射線科で超音波を含む画像診断や、画像を用いておこなうがん治療(IVR)に従事。 1985年より札幌厚生病院消化器内科医長。消化器疾患の診断と内視鏡・IVR治療をおこなう。 1996年より札幌医科大学放射線科助手。消化器疾患の画像診断、がんの非手術的治療の研究に従事。1999年講師、2007年准教授。この間、イギリス王立マースデン病院、ドイツアーヘン大学、カナダカルガリー大学に出向。 認定資格 |