正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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ヨガとヨーガ

     - インド哲学

yogaを始めようとして、最初にひっかかるのが、yogaの読み方です。本によって、また、スクールの名称として、「ヨガ」とあるのもありますし、「ヨーガ」とのびているものもあります。ちょっとのちがいですが、案外気になるちがいです。

どうして、ちがうのでしょう。どちらが正しいのでしょう。インド哲学の講義の中では、すでにお話したことがありますが、ここでも、確かめておきましょう。

yogaというのはサンスクリット語で、語根yuj-(ユジュ)から作られた名詞です。このyuj-という語根は「結びつける」という意味をもっています。そこで、yogaは、「結合」とか「合一」という意味で、身体と心を一つにすること、自己と神との合一、など、さまざまに説明されます。現代人のわたしたちは、「自己を統御すること」という意味で用いるといいかもしれませんね。

さて、「ヨガ」か「ヨーガ」か、というお話しですが、これは、インド現地の人の発音を重視して音写したのか、サンスクリット語の文法を重視したのか、のちがいによります。

「ヨガ」と短く書く場合、直接インドの人が発音するのを耳で聞いて、おそらく聞こえたとおりに書いたのでしょう。

一方、「ヨーガ」とのびるのは、「o」という音が二重母音であるためです。二重母音には、eとoがあります。「o」は「a+u」の母音からなっていると考えられ、単純に「オー」と発音されることになっています。eは、「a+i」で、「エー」と発音されます。

現代のインドでは、サンスクリット語を話すインド人がほとんどいないため、古来どのような発音だったのか、詳しいことはわかりません。そこで、文法にしたがってYogaを「ヨーガ」と発音しているのです。サンスクリット語を勉強した人や学者は、多く「ヨーガ」の表記を用いています。

さて、サンスクリット語の発音で、もう一つ大事なことは、短母音と長母音の区別があることでしょう。みなさんは、八支ヨーガの第三番目にある「坐法」をなんと呼びますか。「アサナ」、「アーサナ」、どちらでしょうか。これは、「アーサナ」が正しいのです。「アー」と伸びる音は、長母音です。短母音は、短く「ア」と発音されます。では、「調気」は、プラナヤマ、それとも、プラーナーヤーマ?これは、プラーナーヤーマと表記されます。一番最後にある「三昧」は、サマディではなくて、サマーディと表記されます。このように、サンスクリット語のことばは伸びる音があるので、注意が必要です。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」316号(2012年4月5日発行)に掲載された記事です。

著者
石飛 道子

略歴
札幌大谷大学特任教授。北星学園大学他、多数の大学・専門学校にて非常勤講師著書『ブッダと龍樹の論理学』ほか多数。

ヨガライフスクールインサッポロ講師、北星学園大学、武蔵女子短期大学、その他多数の大学、専門学校にて非常勤講師として教鞭をとる。著書に『インド新論理学派の知識論―「マニカナ」の和訳と註解』(宮元啓一氏との共著、山喜房佛書林)、『ビックリ!インド人の頭の中―超論理思考を読む』(宮元啓一氏との共著、講談社)、『ブッダ論理学五つの難問』(講談社選書メチエ)、『龍樹造「方便心論」の研究』(山喜房佛書林)、『ブッダと龍樹の論理学―縁起と中道』(サンガ)、『ブッダの優しい論理学―縁起で学ぶ上手なコミュニケーション法』(サンガ新書)、『龍樹と、語れ!―「方便心論」の言語戦略』(大法輪閣)、『龍樹―あるように見えても「空」という』(佼成出版)がある。