正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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老化‐前向きに受けとめる‐

これまで述べてきましたように、老化、老いはさまざまな身体機能を喪失する過程です。
目はかすみ、耳は遠くなり、足腰は衰えます。
残っている機能より、衰えた機能に目がいくのが常です。
たとえば、「目は大丈夫なんだけれど、耳が遠くなった」と嘆き、
何事にも消極的になりがちな人は少なくありません。
前向きに生きている人は、残っている機能に目がいきます。私の祖父はその代表例です。
「耳は遠くなったけれど、おかげで余計なことは聞こえなくていい。目は良くてなんでも見える」と
90半ばになりますが、元気で旅行をしています。

ものごとのとらえ方は、病気の治り方にも影響を与えます。
老人のうつ病には、不眠と食欲不振がつきものです。
お年寄りのお話をうかがっていると、二つのタイプによって治り方が違うという興味深いことがおこります。
それは、「眠れるようにはなりましたが、まだ食欲はでません」というタイプの人と、
「食欲はでないのですが、眠れるようになりました」というタイプの人に分かれるのです。
前者の人はなかなか時間がかかり、手強いものとなります。
後者の人は良くなる傾向が早いようです。
眠れる、食欲がないという状況は同じでも、そのとらえ方が違うのです。

最近、免疫力が注目されています。免疫とは、有害な細菌やウイルスから身を守るしくみです。
風邪にかかりやすい人とかかりにくい人、
回復の早い人と長引く人との違いは免疫力の差によるものです。
この免疫に、ものごとのとらえ方が影響するといわれています。
前向きで肯定的な生き方をしていれば、免疫力は高まるということです。
反対に、心労や悲哀を抱え込んだり抑うつ状態では、感染症、アレルギー疾患、
さらにはガンの発症率が高まることが知られています。
老い方も同じです。年とともに体の機能の衰えは避けられません。
大切なのは、それをどう受けとめるかです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」218号(2004年2月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。