人間関係が少なくなるとボケてしまう-ボケの原因は病気だけではない
ボケること、これはどの年代の人にとっても恐ろしいことです。ボケるぐらいだったら、長生きなんてしたくない、という声をよく聞きます。確かに、早い時には40代からなる病気が原因の認知症もありますが、多くは高齢者に多いものです。認知症の症状、適切さを欠いた問題行動を示すことになってしまうのはなぜなのでしょうか。
認知症には2つの原因があるといわれています。ひとつは、脳そのものの変化による知的能力の低下です。もうひとつは、社会・環境要因といわれているものです。
老化によって、脳の動脈硬化や脳細胞の変化が生じ、認知症状態になる高齢者が他の世代の人よりも多いことは事実です。けれども、なにかのきっかけのあることが多いです。たとえば、入院、引っ越し、配偶者の死、友人の死、定年などによる仕事からの引退、などです。これらは、社会・環境的要因と呼ばれるものです。知的な能力の低下にこれが加わることによって、認知症が前面に出ると、認知症高齢者と呼ばれるようになってしまうのです。
さて、この社会・環境的要因と呼ばれるものの中味は、環境の変化、特に人の変化が中心となります。入院や老人ホームへの入所、子ども家族と同居のための引っ越しなどは、それまで住んでいた慣れ親しんだ場所や人間関係を失うことを意味します。配偶者や友人の死も、自分にとってかけがえない人を失うことを意味します。仕事からの引退も、職場で築いた人間関係の喪失です。こういった馴染み深い人間関係を失っても、それが一部であったり、別の新しい関係が得られればよいですが、そうでないときには孤独な状況へと追い込まれます。
孤独は人を自閉的にさせます。受容的な環境を整え、人間関係を復活すること、これが認知症の予防にもつながります。人間関係は生活に適切な刺激を与えてくれます。
この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」162号(1999年6月5日発行)に掲載された記事です。
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