正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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人間は遊ぶ動物-遊びと仕事のバランス

どんなに忙しくても、私たちは暇をみつけては、ときには仕事を投げ出してでも、外出や買い物、スポーツや趣味に没頭したり、テレビをみてくつろぎます。遊びは人間の生活に欠くことのできないものだからです。

日常の生活は「仕事」と「遊び」の2つの世界に大きく分けられます。

仕事は職業的活動、家事や育児、学業など、生活必需品を生産し、経済的精神的自立のための行為です。仕事に従事することは、ある役割を演ずることであり、その役割に基づく人間関係の世界をつくります。仕事の世界で私たちは好き勝手に振る舞うことはできません。仕事には与えられた役割を果たさなければならないという「ルール」があります。このルールが他者との共通の基礎を作り上げます。職場の一員として行動すること、親として、夫や妻、子どもとしてルールに従うこと、あるいは社会の一員として生活すること、それらは集団として生きる条件です。

ところがこういったルールは人間の自由を抑圧します。自分の好みや意志に従って自由にしたい欲求を押さえつけるものです。そこで遊びが登場します。遊びは気晴らしや休息、娯楽など、仕事と対比して語られるものです。遊びの持つ解放感は、日常の束縛からの解放なのです。解放された世界を持つことなしに、ルールに満ちた世界に生き続けることは不可能です。ゆとりやうるおいが必要なのです。ですから遊びの時間を持たない人はいないのです。

私たちは仕事と遊びのふたつの世界をいったり来たりしながら生きています。これは一生続くものです。なにものにも拘束されることのない世界で、私たちは一息いれ、自由を味わい、自分を作りなおして、再びルールの世界で生きるエネルギーを蓄えるのです。

このふたつの世界がバランスよく保たれていることが、精神の調和や健全さに必要です。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」163号(1999年7月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。