正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

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片づけられない

毎日忙しくても、家事から解放されることはありません。それならば、できるだけ楽ができて、きれいに美しく見える方法はないかしら、と考えてしまうのは私だけではないと思います。生活空間の見た目が良くなることは、心理的ストレスの軽減や気分のリフレッシュ効果が期待できるはず。

ところが片づけられない。片づけているのに、かえって散らかっていくような気もする。これって病気かもしれない。なんて思ったことありませんか。片づけられない病気は実際にあります。正確に言えば、病気の症状として片づけられないことがあるのです。決して、片づけられない人に問題があるわけではなく、精神的に、あるいは脳の構造的に片づけができないのです。

片づけられない病気として、統合失調症、強迫性障害、セルフネグレクト、発達障害などは、掃除の苦手な可能性を持っています。特に、発達障害の注意欠陥障害や多動症などは片づけが苦手なようです。片づけているつもりでも、判断基準が家族と違うために、周囲と折り合いのつかない場合が少なくありません。気になるのであれば、病院へ行くのがおすすめです。

もちろん、片づけられない原因は病気だけではありません。多忙のため片づけの時間がない、物が多すぎて片づかない、人に手伝ってもらうのは恥ずかしいなども、片づけられない原因になると思います。完璧に掃除しなければならないと思うと、手が付けられないこともあるでしょう。片づけが苦手な人は、ルーズなわけではありません。時間的にも、体力的にも余裕がないと、掃除を始められないのです。

ストレスいっぱいの場合も、掃除をする気力、生活を楽しむ余裕がなくなるかもしれません。ストレスを取り除くことが必要です。人に頼ることは悪いことではありません。一度思いきりリセットすることが必要かもしれません。快適な空間を思い出すこと、心地よさを実感することが身も心もきれいになることにつながるようです。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」450号(2023年6月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。