正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

*

世のため、人のため? いいえ、自分のために

お年寄りの話を聞いていると、いくつか気がつくことがあります。そのうちのひとつとして、私たちは、世のため人のためではなく、やはり自分のために生きている、という当たり前のことに気づかせてくれます。

ボランティアをしている人、人のために何かをしたいという人は多いと思います。ですが、これは「人のため」と思ったとたん、善意がしゅるしゅる音を立てて崩れていく感じがしませんか。「自分のため」にやっていると感じていれば、相手がどう受け止めようと腹も立たなくなりますし、嫌らしくも押しつけがましくならないような気がします。

私たちはボランティアによって、社会に貢献する機会を提供されているのです。社会に参加している自分に満足させてもらっています。また、ボランティアの対象となる方、お年寄りや障害を持つ方は、ボランティアの機会を提供するという「社会参加」をしていると考えることもできます。

こんな風に考えると、肩の力を抜いていろんなことに挑戦できると思いませんか。これまで何かしら人のお役に立つことを考えてきたのですから、年をとってまで他人のお役になんか立たなくて良いのです。それより年をとっても、生活を楽しむ術を考えましょう。くらしの技を持っている人は生き生きしています。これまでどんな肩書きを持ってきたかなんて、老後には何の足しにもならないです。もう少し自由に、自分が生きたいように生きる術が必要です。

そのためには、ネットワーク作りが大切です。家族とか親族、ご近所を頼るネットワークではなく、好きなように生きるためのネットワークです。今やインターネットの時代、体が不自由であっても、興味を追求するための手段は持てます。年齢制限なんてありません。世代を越えた仲間作りができます。

自分のために、何かを始めてみませんか。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」258号(2007年6月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。