正しい食と適宜の運動、そして明るい心こそが真の健康を築きあげます。ここでは、機関紙「未来」に掲載されたコラムを発信してまいります。

ヨガライフスクールインサッポロ 機関紙「未来」ウェブ

*

入試の季節 もうすぐ春

本格的な入試の季節になりました。受験生を持つご家庭にとっては、日々緊張の時と思います。代わってあげるわけにもいかず、頑張れと励ましても、ストレスが増しそうだし。親も子もなかなか辛い。実は、試験監督も辛いのです。

今や多くの大学では、八月から三月まで何かしらの入試を抱えています。推薦入試にAO入試、編入学。センター入試に、前期・後期の二次試験。大学院入試がこの合間に入ってきます。志願者の数に一喜一憂しながら、学校説明会も多いのです。

入試の試験監督は、受験生がつつがなく試験を受けられるよう気を配ります。公平な実施のためにマニュアル通りに説明し、あとは静かに試験監督。もちろん、居眠りをするわけにもいかず、本を読むわけにもいかない。大学入試の長い試験は一二〇分あります。受験生も大変ですが、試験監督にも辛いのです。数を数え間違わないこと、狭い教室の中を受験生の机にぶつからないように動き回ること、こわばった表情にならないことなど、年を取ると難しくなることが監督の課題です。

普段はあっという間に過ぎる時間が、針が止まったのかと思うほどゆっくり過ぎていく。仕方がないので、いろんなことを考えます。おかしな妄想をするわけにはいきませんが、受験生の鉛筆を動かす姿を見て、「ああ、この子はこれまでこんな風に勉強してきたのかなあ。大学に入ったら、こんな風に勉強してほしいなあ。大学卒業後は・・・」といった空想です。勝手に人の人生を想像し、良い春になって欲しいと本当に思うのです。

そんな空想力を持たないと辛い試験監督ですが、しかし、受験生の集中力はすごいです。あと十分と告げられた後も、手が止まることなく書き込んでいる。若い力を感じます。入試で勝つためには、この最後まであきらめないことと集中力だと実感します。普段の勉強の中で、あと十分となった時もそこからどれだけ集中できるか。そんなトレーニングが必要です。多くの受験生に良い春が来ますように。


この記事はヨガライフスクールインサッポロ機関紙 「未来」291号(2010年3月5日発行)に掲載された記事です。

著者
村田 和香
群馬パース大学保健科学部
北海道大学名誉教授
保健学博士

略歴
札幌市内の老人病院に作業療法士として勤務。その時に、病気や障害を抱えた高齢者の強さと逞しさを実感。以後、人生のまとめの時である老年期を研究対象とし、作業療法の臨床実践、教育・研究のテーマとしている。